同シリーズの他の本と違い、思想というよりは動乱の時代を生きた強かな男たちのエピソード集とでも言うべき趣。孔子の生まれた春秋時代の後、大国小国入り乱れて相争う戦国時代を舞台に、知恵と勇気とを武器に戦い抜いた人たちの生き様が活き活きと記されている。
舌先三寸で乱世を泳ぐ策士たち、恩に報いて命を賭ける刺客、日頃は穀潰しに過ぎないというのに主の危機には颯爽と立ち上がる食客。臣下に忠臣、謀臣、佞臣あれば、主君にも名君あり暗君ありで、各人の強烈な個性が魅力的なエピソードの数々を煌びやかに彩る。
策士たちの処世術や説得術には学ぶべき所が大いにあるし、単純な娯楽として読んでも充分に面白い。このシリーズの特色でもある分かりやすい現代語訳も健在で、楽しく読める一冊。