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冬の伽藍 (講談社文庫)

価格: ¥880
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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美しい織物のような小説 ★★★★☆
 ありきたりな比喩かもしれませんが、本作は、「男」という縦糸と「女」という横糸を丁寧に編み上げた美しい織物のようです。縦糸と横糸はあたかも互いに無関係に色づけされているのに、それらが織り合わされたとき、息をのむような深く美しい紋様が浮かび上がってくるような、そんなイメージです。
 しかし、美しさは残酷さの裏返し。男(義彦と英二郎)と女(悠子と美冬)は、惹かれ合いながらも、縦糸と横糸のように、決して長く寄り添うことはない運命にあり、一瞬の交わりにすべてをかける。そんな儚さが胸を締め付けます。
 二人は、最後の最後に(ある意味では)救われました。でも、私にはハッピーエンドには思えませんでした。苦しみの意味はたぶん男と女ではまったく違うし、「救い」の意味も同じでないという哀しい現実に気付かされます。美しく感動的であるだけに、このどうしようもない深い溝に、いっそうやりきれなさが募りました。
やはり人が死ぬ、だが絶妙 ★★★★☆
冬の伽藍 小池真理子 講談社文庫 2002

講談社 1999単行本 
3章からなる恋愛小説。夫を事故で失った薬剤師、妻を自殺で失った医師、その二人を取り巻く日常と非日常的出来事。いつもの様に事件、事故的な死があり、そこに人々の関係性が描かれているけれども、その展開が絶妙。1章を読み終えた時にはそれほどに物語の中に飲み込まれる事はなかったのだが、2章から3章そしてエンディングに向かう言葉の流れには知らない内に完全にその物語の中に入り込んでしまい、本を閉じる事が出来なくなった。
そんなオヤジをも泣かせる一冊だった。
静謐だが激しい愛 ★★★★★
めまぐるしい現代の中にあっても、そこにはゆるやかで静かな時が流れていた。
軽井沢の雪解け、柔らかな暖かさを与える冬の太陽。
自然と人間とを添わせるように描いているさまが心地よい。
若いのに生きながら死んでいるような義彦と、年は取っても生への欲望漲る義父・英二郎との対比。二人に翻弄される悠子。
義彦が生きる意味を見つけつつあった時、義父の死が悠子と義彦を分かつ。互いを思うが故に貫き通す哀しく切ない愛。
ラストは読者すべてが悠子に感情移入したであろう。
思わずもらい泣き〜 ★★★★★
小池真理子を読むのはこれで3作品目くらいですが、
過去の痛手を抱えながら、医師”義彦”を愛する半面、同じく医師の義父にどうしようなく惹かれる主人公の気持ちに深く入り込んで共感できた。
(義父がなかなか魅力的に感じました。)

ストーリーはどんどん切ない展開になっていきますが、
絶望的な中でも再会し、抱擁し合う彼らの姿が目に浮かぶような。。
そんな、もらい泣き作品でした。



冷え切った魂を溶かし、熱を帯びて燃え上がる物語 ★★★★★
この作品を読んだ時、小池真理子の印象は180度変わった。

物語は3章構成。
1章では、主人公である薬剤師の悠子と、医師である兵藤義彦の出会いと悲劇の幕明け。2章では、悠子と義彦の手紙のやりとり。3章は悠子の親友である摂子の視点から物語が綴られている。
悠子は夫を交通事故で亡くした女であり、義彦は妻に自殺された男である。義彦の義父で好色な英二郎とその内縁の妻・聡子、悠子の親友である摂子とその夫、義彦を慕う慢性白血病と闘う少女などが登場するが、周囲の登場人物の数は決して多くはなく、物語りの長さを考えればむしろ少ない。
そんな中で、冷えた魂を抱えた悠子と義彦が、どのようにしてその魂を徐々に溶かし、熱を帯びて燃え上がっていったのかを綴り、そのために起こった悲劇と、その後の再生を綴った後半の物語は、最後の場面に向かって時にもどかしいほど緩やかに進んで行く。是非読むべし!