国境三部作を締めくくる作品。舞台となるアメリカ南西部とメキシコ北部は決して穏やかではないものの、人々の善意が感じられる世界。しかし戦争や石油産業によって主人公達にとって居心地のよいその土地は変容しつつある。
そんななかでどこか疎外感をもつカウボーイの主人公が、自身と同じ“血の熱さ”が感じられる娼婦に惹かれ本能のままに烈しく行動してゆく。
圧倒的な筆致で描かれるこの作品は、引き込まれること必至。直情的ながらも普段は冷静にしている主人公に心惹かれ、感傷に浸ったわけではないのだがクライマックスは涙が止まらなかった。
前2作を読んでおいた方が楽しめるのですが、『越境』は少し手に入りづらいと思います。もちろん読んでいなくても十分面白いです。