2003年は“イヤー・オブ・ザ・ブルース”と呼ばれたが、『American Folk Blues Festival』シリーズの新作がリリースされるなら、どの年であれ喜んで迎え入れたいもの。本作は第3巻目となるが(最初の2巻がリリースされたのは、そう、2003年だ)、質の高さはまったく失われていない。内容は、アメリカのブルース・ミュージシャンたちによる1962年~1969年のヨーロッパ・ツアーの記録である。マディ・ウォーターズがボーナス・トラックで燃え上がるような2曲を披露し、かつてカウント・ベイシーと共に活動したことで有名なジョー・ターナーも登場。フィナーレには、ボーカリストのヘレン・ヒュームズ、ピアニストのメンフィス・スリム、ギタリストのT-ボーン・ウォーカー、ベーシストのウィリー・ディクソン、そして長年のコンビであるサニー・テリー&ブラウニー・マギーといった豪華な面々がそろう。スキップ・ジェイムス、ブッカ・ホワイト、ドクター・アイザイア・ロス、サン・ハウス(全員アコースティックなデルタ・スタイルを特徴とするプレイヤーで、そのリアルでヒリヒリするようなサウンドはブルースの真骨頂と言える)といった名前がシリアスなブルース・ファンにしか通用しなくても、心配ご無用。本作に収録された演奏は、いずれ劣らぬ名演ばかりだ。現存する唯一の音声付き映像と言われる、伝説のハーモニカ奏者リトル・ウォルターの登場シーンも必見。モノクロ映像と超鮮明なサウンドが、これまた素晴らしい仕上がりを示している。しかし、映像が良いだけでは、これほど魅力的な作品にはならない。やはり音楽あってこその本作である。ローリング・ストーンズ、ヤードバーズ、レッド・ツェッペリンをはじめとするバンドのメンバーたちがみずから足を運んだことからも分かるように、これは我々の文化を永遠に変えてしまった音楽なのだ。(Sam Graham, Amazon.com)