セロニアス・モンクの代表作はリヴァーサイドの『Brilliant Corners』や『Monk's Music』かもしれない。しかしそれら初期の作品は、個性的な先輩ミュージシャン、または同期のミュージシャンを、さらに個性的な自分の音楽のために協力させた作品とも言える。モンクの音楽を理解し切れていない者もいるが、そのぶつかり合いもまた楽しい。
   本盤はジャズ界でカリスマ的地位を得たモンクが、信者ともいえるテナー・サックス、ドラムス、ベースを従えたワンマン・カルテット。比較的小物かもしれないが、心底モンクス・ミュージックを敬愛するメンバーを、モンクは自分の音楽のための駒として使う。あの独特な、モンクのタイム感覚を際立たせるため、メンバーはメトロノームのように正確なビートを刻む。その結果モンクはモンクらしさを百パーセント出せるのだ。実力者同士のぶつかり合いというスリリングさは減少したかもしれないが、モンク自身はいよいよ自分の音楽にまい進する。（高木宏真）