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三年坂 火の夢 (講談社文庫)

価格: ¥760
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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ミステリとして面白くなかったなあ ★☆☆☆☆
江戸が色濃く残る東京の地図を追うのは楽しいが、ミステリとしてはいかがなものか。
プロットが弱いというか、謎の核心が時代劇じゃあなあ、と。
読了したけど、ブックオフ行きだねえ。
ユニークな着眼点で描かれた乱歩賞受賞作 ★★★☆☆
’06年、「第52回江戸川乱歩賞受賞作」。同時受賞の『東京ダモイ』とは異なり、明治時代の東京を舞台にした歴史&青春ミステリーである。

内村実之(さねゆき)は18才、奈良県のとある町の旧制中学5年生である。ある夏の日、5才年上の帝大生の兄が突然帰郷した。それも、帝大を勝手にやめて、下宿を引き払い、渡されていた残りの学資も使い果たし、さらには腹部に傷を負って・・・。やがて兄は「実は三年坂で転んでね」と、謎の言葉を残してあっけなく死んでしまう。実之は、兄の死の謎を解くため、旧制一高進学を決意、単身上京する。彼はさまざまな人たちと出会いながら、“坂の町”東京で「いくつもある三年坂」を探して歩き回るのだが・・・。

ストーリーは、この実之の物語を「三年坂の章」として、そして予備校の鍍金(めっき)先生の東京の大火事についての推理行の物語を「火の夢の章」として、このふたつの章が交互に描かれて進んでゆく。

普通のミステリーが持っていない、奇妙だが、魅力的な“謎”を持つ小説だった。特に明治期の東京を「坂の町」としてみるという着眼点はユニークだと思う。

難をいえば、実之の「三年坂」探索行が、注釈が多くて、私のように東京以外の住人で東京の地理に詳しくない人にはつまらなかった事だろう。

この回の乱歩賞受賞作は2作品とも比較的厳しい評価がされているが、私は本書には及第点をあげてもいいのではないかと思う。
レトロ感覚 ★★★★☆
しばらくご無沙汰している江戸川乱歩賞受賞作品を検索した折、ノスタルジックな感覚のタイトルに惹かれて読もうと思った。
多くの本を読んでいると、タイトルだけで内容の傾向のようなものが、おぼろげながら判るような気のする時もある。そういう時には自分の勘を信じることにしている。
だから、作家諸氏も多分作品のタイトルには、充分に気を使っているのではないかと思うが、どうだろう?
こういうタイトルに郷愁のようなものを感じるのは、本格的にミステリーを読むようになった、僕にとって原点とも言えるのが、シャーロック・ホームズだったから、古き良き時代を連想させるようなミステリーに惹かれるのかもしれない。

まあ、そういったところで読み始めると、まさしく本書の舞台は維新後の間もない明治初期の東京だった。
メインのキャラクターは二人。帝大進学を目指し奈良県S市から東京へ出てきた内村実之、と、大学進学のための予備校(この頃から予備校はあったのだと、初めて知った)、開明学校で英語の講師をつとめる高嶋鍍金(めっき)先生。
物語はこの二人の視点、“三年坂”と“火の夢”ということで進行する。
貧乏士族・橋上家の次男坊である実之は、父親の橋上隆が家を捨てて東京に出てしまったために、母親、兄・義之とともに母親の旧姓内村になって、母親の実家で暮らすことになった。成績の優秀な兄は帝大に進学していたが、ある時怪我をして実家に戻ってきた。大学も辞めてしまっていたようだが、その理由も判らないまま怪我から入った菌に犯されまもなく死亡してしまう。
義之は東京で父親探しをしていたらしいが、死の直前に口走った「三年坂・・・」の謎とは何か?
アルバイトでためた金と、友人の援助もあって、実之は帝大進学を目指すという口実で、東京へ出ることを決心する。

一方、高嶋鍍金は出版社天命館の編集者鷺沼の依頼で、書いた都市火災についての原稿が好評だったということで、再び原稿の依頼をされる。同じ開明学校で、物理学を教えている立原との間で、東京を焼き尽くしてパリ並みの都市の再開発をするには、どこに火をつけるかという話になるのだが・・・。

このストーリーの見事なところは、内村実之という青年の、受験を控えた中での“三年坂”探しのもどかしさと、一方の高嶋鍍金の東京を焼き尽くすための複数の発火点探し、そして、失踪した実之の父親が、どのように繋がっていくのかが終盤まで混迷の度合いを深めていくところだ。
東京の坂の名前の由来が、解明されていくのも面白い。

'09/8/6付 ブログ(http://pub.ne.jp/suminoroujin/)より転載
賛否両論あるだろうけど、物語りとして優れている ★★★★☆
あまりミステリー小説という感じはしなかった。
が、明治時代の東京における坂の謎という設定が面白かった。
火事で全焼した東京の再開発計画・・・この話は昭和になってからも実は存在しており、東京で直下型地震が起こった後、大手ゼネコンが中心となり新たな東京の町作りを行う極秘の計画がある。
こんな話が昭和の終わり頃には随分と囁かれていました。

さて、星が5つでない理由として、アイテムを少し詰め込みすぎたきらいがあると思います。
できたら鍍金先生を主人公とした探偵ものにしたほうがすっきりしたのではないでしょうか?
いまいち ★★☆☆☆
文章が平坦で、なかなか事件の核心に行き着かない。
読んでいて少しイラついた。
明治時代に興味があったのでなんとか読み切ったが、この時代に興味がない人にはどうなのだろう…。と思い、☆二つ。