安積警部補シリーズの短編集。
★★★★☆
安積警部補は、お台場にあるベイエリア分署(※架空の分署です)に勤め、軍曹気質で口うるさい村雨、繊細であれこれ考えすぎるがやたらと強運で勘の冴える太りすぎの須田、豹のように俊敏で無口な黒木、村雨に忠実に従う桜井、というユニークな部下を従え、型破りなスープラ・パトカー隊の速水、頑固で職人気質の鑑識の石倉……と濃い同僚に囲まれ勤務する良識的な刑事。この作品には、6つの小品が収められています。どの物語からでも読める気軽なノベルス。どれも爽やかな読後感で、心が温まります。
■暗殺予告
安積たちは、お台場のTV局に出演予定の香港映画スターへの暗殺指令を阻止するようガードに当たるが、不審船が目撃され…。
■被害者
安積は発砲未遂事件の犯人を取り調べるが、彼の大学生の娘は、彼が撃とうした男に数年前に襲われ、その際に命を落としていた…。「被害者」とは誰をさすのか?
■梅雨晴れ
梅雨、それは誰もがイライラする季節。石倉と若い刑事が衝突し、安積も速水に失言をしてしまう。そして電車内での暴力事件……。
■最前線
桜井が、忙しいことで有名な竹の塚署の帳場に駆り出される。そこは、以前は安積班に所属していた大橋の異動先の署だった。桜井は、貫禄のついた大橋と協力して捜査に当たるが、現在の自分と同じように以前は村雨と組んでいた大橋の成長と変貌ぶりを見て……。
■射殺
白人の射殺死体が発見され、安積は、気難しく偏屈なLAPD(ロサンゼルス警察)のウッド捜査官と協力して捜査にあたることになる。ウッド捜査官は、米国とは違う日本警察の捜査をことあるごとに非難するが…。
■夕映え
安積警部補は、警視庁との合同捜査で昔の恩師三国と再会するが、優秀なものの叩き上げな現場捜査官である彼は、安積警部補よりも下の役職のまま定年を迎えようとしているのだった…。