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光ってみえるもの、あれは (中公文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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   16才の男子高校生が、奇妙な大人たちに取り囲まれながら、自身も大人へと変容していく過程を描いた青春小説。著者は、独身女性と70代の恩師とのゆるやかな恋情を描いた『センセイの鞄』といった恋愛小説や、非日常なものたちが日常へと侵入する『神様』や『龍宮』などの説話的な物語を得意とする。本書は、一見すると、なまめかしい性愛や、不可思議な怪異などとは無縁に見えるが、独特のユーモアと抒情の中に、川上ワールドともいうべき強固な世界観を見て取ることができる。

   江戸翠(みどり)は、フリーライターの母と祖母との3人暮らし。「ふつう」である翠に少し不満を持つ母を筆頭にして、家族はみな、どこか浮世離れした人々だ。ときどき「翠くんの生き血を吸いたくなるのよね」などと言う祖母。そして、翠の遺伝子上の父親で、ふらりと家にやってくる大鳥さん。一方で、親友の花田は「ものすごくシミシミした感じで」世界に溶けこんでしまう自分が困るという。やがて花田は、セーラー服を着て登校しはじめる。

   著者は、芥川賞受賞作『蛇を踏む』などで、「女に化けた蛇」「くま」といった異形のものたちを違和感なく物語に溶け込ませてきた。本書もまた、翠と花田が、長崎の小値賀(おぢか)島へたどりつくころから、寓話のような色あいを帯びてくる。ただし、本書で異質なものとされるのは、大人や女性といった現実に生きる人間たちだ。彼らに翻弄され、漂うように生きる翠は、著者の作品に共通した主人公像といえる。しかし、無人島の神社に参詣するという通過儀礼を経て、不器用ながらも世界と向きあう決意をした翠の姿には、円熟味を増した著者の新たな物語世界が芽吹いている。(中島正敏)

枯れた主人公×嫌な女 ★★☆☆☆
主人公の恋人であった平山水絵がなんかしゃくにさわりました。 いっけん見所のありそうな女の子なのに…
たしかに花田くんは魅力的ではあります。が、主人公である翠くんのよさみたいなものがもっと知りたかったです。最後だって、主人公と菊島さんがいい感じになるのかなと思っていたのに、また花田ですか…それでいいのか?翠よ。
いずれにしろどちらの少女も好きになれませんでしたが…
翠もうちょっと頑張れ。あんたも周りの人間も枯れちゃってるよ…
川上弘美の「スタンド・バイ・ミー」 ★★★★★
村上春樹風のクールな主人公をはじめとする、多分に美化された今時の若者たち。ビルドゥングス・ロマンの王道をゆく作品である。彼女が得意とする超現実的な描写はない。日頃の作風と本作品との関係性から、スティーヴン・キンブの「スタンド・バイ・ミー」を連想した。

しかし、私はこの結末には同意しない。風変わりな環境に育ち、周囲への配慮に敏感な冷静な高校生がこのような行動に出ることには、心理的に飛躍がありすぎると思う。現実には考えにくく、しかしドラマではありがちなこの結末は、ここに至るまでの微妙な心理描写に相容れない。

文章はすばらしい。ちょっとした表現に彼女の個性が光る。マサコさんの娘がアイコさん、という設定に、何か寓意があるのだろうか?オオシマさんではなくオオトリさんにしたのは、なぜなのか?また、ところどころに箴言めいた言葉があり、私は何度か考え込んだ。「苦労性な人間のところには、ますます苦労が集まる」(p.228)。なるほどそれで…。
花田くんに要注意 ★★★★☆
著者の小説としてはフツーな感じでぐんぐん読み進めますが、主人公の友人の花田くんに注目すると、それもかなり怪しくなります。全体的に会話は村上春樹のように軽やかに進むので、あの独特の間が好きな人にはかなりいいでしょう。主人公はなぜかほれられる、というのも共通しています。

花田くんのあやしさは読めばわかりますが、主人公と似たもの同士でありながら行動派な彼には好感がもてます。しかも内省的。主人公の彼女が「ただの少女」なのに比べて、この友人には妙に存在感があります。特に後半部分の描写はおもいっきり同性愛的に読めてしまいました。
川上弘美節の、妙に枯れた味わいのある青春小説。 ★★★★☆
序盤〜前半はいまひとつ作品世界に入り込めず
「おやまぁ 川上弘美作品にしては珍しい」と思っていたら、
中盤を過ぎたあたりから突如、最初の遅れを取り戻すかのよーなものすごい勢いで
引き擦り込みにかかってきた。

あっさり搦め取られてしまい、気づいたら最後の頁だった。

特に夏休みに五島列島(だっけか)を訪れる辺りから、
物語は急転直下のクライマックスへと突き進んでゆく。
といってもやはり川上弘美節、
どこかゆるくてもやもやとしたクライマックスではある。

カテゴリとしては青春物語?川上弘美作品にしては珍しい感じ。
佐藤多佳子の青春モノほど清々しく突き抜けてもいないし、
山田詠美の青春モノほど大人びてもいない、
青春のはずなのにみょーに枯れ木の味わいが感じられる(川上節の真骨頂)、
それでいて「ちゃんと青春している」あたりがなかなか新鮮だった。

主人公は折り目正しくマジメな男の子だけれど、
周りにいたらあんまり面白くないタイプだと思う。
私はむしろ、親友の花田くんがすごくすごく好きだ。
あの一本気で筋が通った感じ、とてもいい。
落ち着かないが、ちょっとうらやましい ★★★★☆
母親と大鳥さん、また母親の現恋人など、主人公をとりまく大人達は存在感があるのに、行動はあやふやで読んでて落ち着かない。でもそれほどイヤな感じはなく、後半の、花田と過ごす夏休みの場面がよかった。自分の高校生の頃を思い出し、思い通りになることは少なくても、いろんなことがこんなに自由だったら良かったのに、と思った。