トレンディ・ドロドロ小説
★★★☆☆
川上弘美ともあろう人がこんな「トレンディなドロドロ話」を書くなんて。この本を読み始めた私は、コレハ失敗シタと思ったのであった。またこんな作品を書いた作者を心配した。「川」三部作で有名になったあといつしか昼メロ風作品の巨匠になったTM氏の轍を踏んで欲しくない。最初の20ページほどの違和感が強烈で、シッパイシッパイと思い続け、そのうちすんなり読み進められるようになったけれど、解説者が褒めているのは今も解せない。つまるところ私は、こうした濃厚な「はしたない小説」が好きではないのだ。
好意的に見るとこれは、人間の外面と内面との乖離によって生じる、わずかだが決定的な齟齬が生む男女の心理ドラマであるといえるだろう。しかし中年も終わりつつある私から正直な感想を書くなら、これは二人の「虫のいい女」と三人の「ばかな男」とが織りなす、真剣勝負のお遊びであるに過ぎない。傍目から見て(つまり読者として読んで)決して見好いお芝居ではないのだ。誰かが新聞のコラムで「女性の80%は虫のいい女だ」と書いていたことの当否はともあれ、女性である作者が二人の女性の両方を見下しているはずはないから、この虫の良さは女性にとって自明のことなのだろう。しかしそれは生きる知恵なのであるかもしれず、その点で男のばかさ加減は救いようがない。もっとも、こうした構図があるからこそ、人類は今まで滅亡せずにきたのだとも言え、大昔から物語の種を尽かせず提供し続けてきたのだとも言える。
最後に独り言。春名さんの顔がどうしてもハリセンボンの春菜さんになってしまい、そうしたら必然的にリリさんの顔がその相方になって、(ハリセンボンは好きなのだけど)物語の雰囲気とどうしても合わなかった。私にとってこの小説は相性が悪いのだ、と諦めるしかない。そして、川上弘美はこんな作品など、他の人に任せておけばよい。
あわあわとした物語を読みたい
★★☆☆☆
読んでいるあいだ信じられない事に、まるで江國さんの小説を読んでいるような錯覚に陥りました。川上さんのどこか飄々とした表現があえて封印されているような感じがしました。
実話を描くならリアリティーが欲しい!
★☆☆☆☆
「センセイの鞄」が良かったので期待して手に取ったが、全くの期待外れ。描かれている人物や事件にリアリティーを全く感じることができない。もう少し平易な日本語を使えば、ライト・ノベルになるのだろうが、それではストーリーがつまらなすぎる。
いいたいことが、ほとんど消化されてないのでは?
恋愛小説のようだけど、そうでない気がする。
★★★☆☆
物語の中で描かれているのは、何とも言えない漂流感・孤独感・・・
恋愛小説のようだけど、登場人物は誰も、そんなに深く誰かを愛していない事に気づくと、この物語の中心が見えてくる気がします。
そういう経験をしてきた読者なら、人間の危うさ・脆さを自然な事として描いているこの作品に惹きつけられたり、癒されたりするのでしょうね。
私も、その一人ですから。
恋愛第一主義、正義感あふれてた頃に読んでも、わからなかったかもしれない。
わからないほうが、幸せな人生なのかもしれませんね。
それは公園からはじまる
★★★★☆
二時間あまりで読めてしまいますが、内容は人間として何が大切で何が幸せなのか、問いかけてきます。正直に生きることの難しさも。恋愛模様を中心に男達と女達の友情のはかなさも。
これからの人生に何をかけるんだと聞かれたら、たぶん、自分、と答えるのでしょう。自分がなかったら、友情も恋愛も成立しないんでしょうね。ストーリーは自分が何によって存在しているかあやふやな人達が登場してきます。恋愛ものですが、それに溺れていけないところが面白いと思いました。