日中戦争下、浪曲師上がりで野放図な大宮二等兵(勝新太郎)と名門生まれのインテリ上等兵・有田(田村高広)は厳しい規律に縛られた陸軍で出会い、やがて意気投合して軍内部など腐敗した権力に立ち向かっていく。大映で8本、その後東宝配給で1本製作されたカツシン主演の傑作戦争アクション映画シリーズ。とかくジメジメしがちな日本の戦争映画の中で、本シリーズは豪快かつ痛快な面白さで観る者を圧倒してくれる。本DVDボックスは大映の8作品を上下巻に分けてのリリースとなる。上巻は『兵隊やくざ』(増村保造監督)『続兵隊やくざ』(田中徳三監督)『新・兵隊やくざ』(田中徳三監督)『兵隊やくざ 脱獄』(森一生監督)の4作品を収録。(増當竜也)
第8作『強奪』はシリーズ1、2を争う傑作
★★★★★
「兵隊やくざ」シリーズは反軍隊映画の傑作ですが、特に第四作『脱獄』と第八作『強奪』はスキのない作品です。
画面も緊張感に満ちていて目が離せません。『強奪』の撮影は名手・森田富士郎で照明のとらえ方など素晴らしい職人わざを見せてくれます。
『強奪』は戦争が終わったのに戦いつづけようとする関東軍(須賀不二男など)、中国人民解放軍の軍資金を「強奪」する悪徳・日本人兵士たち(夏八木勲や江守徹など)など、中国人以上の敵に取り囲まれながら、なんとか日本に帰ろうとする大宮(カツシン)と有田(田村高廣)は捨てられた赤ん坊を拾ってしまいます。自分の命も守り切れそうもない状況でいったい、どう生き抜いていったらいいのか、途方もない展開は「仁義なき戦い」の様相を呈して二転三転。結局、義侠心が道を開くというカツシンらしい「熱い」物語で終わります。
もっともっと高く評価されてよい傑作でした。
これほど旧陸軍の陰湿さをコミカルに描いた映画を知らない。
★★★★★
これぞ究極のマンネリ映画の最高峰だと思います。インテリの有田上等兵を演じる田村高廣、ヤクザ稼業でしたが、正義感と腕っぷしには自信のある勝新演じる大宮二等兵は最高のコンビぶりを見せてくれます。旧日本陸軍の陰湿な体質の中で、二人は知恵と度胸・腕っぷしで、毎回、痛快な喧嘩っぷりを見せてくれますが、あまり戦闘シーンはなく、軍隊内でのドラマが中心で、軍隊の仕組みや慰安所のしくみもよくわかり、そうした意味でもこの映画は興味深いと思います。モノクロですが、それがよりリアリティを増しています。「独立愚連隊」とあわせ、いまや日本の娯楽映画として貴重な映画資産ではないでしょうか。
勝プロ製作『新兵隊やくざ 火線』のリリースは…?
★★★★☆
<貴三郎>を妙に気に入っていた勝新が、数々の傑作 “俺” 作品をこの世に輩出した <勝プロ> で製作した渾身のシリーズ最終作品。カラー、昭和47年。監督は増村保造。共演ではヒロインに安田道代、敵対する軍曹に宍戸錠とデラックス。勿論、<有田 “インテリ” 上等兵>田村高廣も出ている。大映倒産したから、東宝配給で公開。DVDリリースあるとしたらやはり東宝からか?でも東宝 “ケチ” だから…むつかしいだろうな……。