日本陸軍の諜報員養成機関・陸軍中野学校をモチーフとした市川雷蔵主演の傑作スパイ映画シリーズ5部作。本DVDでは第1作『陸軍中野学校』(増村保造監督)『同 雲一号指令』(森一生監督)『同 竜三号指令』(田中徳三監督)『同 密命』(井上昭監督)『同 開戦前夜』(井上昭監督)の全作を収録している。第1作のみは中野学校の非情な実態が描かれるが、第2作以降は活劇色が強くなり、中野学校の第一期生・椎名次郎(市川雷蔵)の国際的暗躍がクールでスタイリッシュな作りで描かれていく。時代劇のイメージとは一味違った背広姿のライゾーの勇姿、とくとご堪能あれ。(増當竜也)
絶対お勧めっ!!
★★★★★
全編が白黒画面だが、それが妙にリアルな感じを見る者に感じさせる。
それにしても市川雷蔵という俳優は稀代の役者だ。
彼の醸し出す独特の雰囲気は、他のどの役者にも出せない彼だけのものだ。
日本を中心として、あるときは中国を舞台にして昭和13年から開戦までの中国・英米の国内スパイとの戦いを「現実感」を感じながら見ることができるだろう。
一巻は昭和13年の設定。中野学校の設立から卒業までの人間模様が描かれる。
二巻は昭和14年秋の設定。神戸が舞台。女スパイとの戦い。
三巻は昭和15年秋の設定。上海が舞台。大陸での戦い。
四巻は英国大物スパイキャッツアイとの戦い。なんとこの大物スパイの正体は…。
五巻は昭和16年11月。開戦日時の情報が漏れた。国外への無線連絡をギリギリで阻止する。
椎名次郎は何処へ
★★★★★
ご存知、市川雷蔵主演の「陸軍中野学校」シリーズ全5作を収録したBOX版。どの作品を採っても楽しめるが、個人的には第一作が「007 カジノ・ロワイヤル」を凌ぐ面白さで、ベスト。すなわち、007誕生秘話ともいえるダニエル・クレイグ主演の同作も最愛の女性を死に追いやるスパイの悲劇性をメインとする筋立てであったが、同作では女性が最初からスパイであったのに対し、本作は運命の悪戯が布引雪子をスパイに貶め、最後は椎名次郎が自らの手にかけるという凝った筋立てで、悲劇性と虚無性がより強く観客の脳裏に刻み込まれる。正に本家007を凌ぐ傑作。また、ラストで衣服をうち捨ててベッドに横たわるシーンも含め、小川真由美のかもしだす清楚さと妖艶さの入り混じった美しさには、やられた。戦時中の椎名次郎が活躍する続編も是非観たかった。
私もスパイになりたくなった
★★★★★
市川雷蔵主演のスパイ映画5部作。「陸軍中野学校(1966)」、「陸軍中野学校雲一号指令(1966)」、「陸軍中野学校竜三号指令(1967)」、「陸軍中野学校密命(1967)」、「陸軍中野学校開戦前夜(1968)」。
歌舞伎と時代劇のホープ、市川雷蔵がスーツに身を固めてクールなスパイ役を演じている。
演技も彼自身のナレーションも非常にニヒルである。私も雷三演じる陸軍・諜報機関員・椎名次郎のようなニヒルな男になりたい。
このシリーズは諜報・防諜・情報収集教育が必要な内外の諸機関が必見の映画だそうだ。私も非常に勉強になった。とくに最初の「陸軍中野学校」は本の『秘録 陸軍中野学校』に忠実に作られている。士官学校ではなく一般の大学から選抜された中野学校の学生はスパイの精神は「誠」であることを叩き込まれる。
どの巻もまったく飽きさせない。リメークの必要全くなし。白黒の方が雰囲気が出ている。それに市川雷蔵を越える俳優がいるだろうか。
情報戦音痴の日本人必見だ。というか日本中の高校の社会科の授業で見せるべきだ。
東宝を凌ぐ大映映画娯楽最高峰
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今までジャケット、スチールなどから漂う暗さに敬遠がちで
知ってはいても観なかったのですが、ある日第1作目を観てみました。
なんて面白いんでしょう!
1作目観終えると2作目、3作目…。と止まりませんよ、これ。
昭和戦前の雰囲気を出すためにわざと白黒フィルムで撮影し、
主演の雷蔵さんは眠狂四郎の艶っぽさとはまた違う実直さで
冷徹にニヒリズムを持って演技していて別の魅力全開です。
東宝から借りた加東大介演じる上司との掛け合いは堪りません。
ボンドガールよろしく毎回変わる助演女優陣はみんな美人!
また特筆されるのは戦前の各国スパイ演じる外国人俳優たちがが
みんなそれらしいバタ臭い雰囲気を持ってるのがこの作品に格別の風味を味付けしています。
よく1作目と2作目以降は別物っていう評価をお見受けしますが私は全然そう思わない。
5作品4監督で撮ってますが全作品一定した面白さです。
とにかく1作目観てください、やみつきになります!
なんでリメイクしないんだろう?
雷蔵氏いないと無理かな?
数少なき日本スパイ映画の名シリーズ
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かつて日本軍に存在していた、スパイ養成機関・陸軍中野学校!
『ある殺し屋』2部作等と共に市川雷蔵氏の数少ない現代劇{というより近代劇}シリーズものにして、東宝の『国際秘密警察』シリーズと共に数少ない国産スパイ映画でもある。
戦国時代の『忍びの者』を太平洋戦争(第二次世界大戦)の世界にアレンジしたとはいえ、『忍びの者』シリーズや勝 新太郎氏の『兵隊やくざ』シリーズと同様に白黒映画で製作されている。そのため嘘っぽくなりそうな話に、リアルな説得力を与えていた。
また市川氏も虚無的で、時流に翻弄された主人公を好演している。また加東大介氏も、『社長』&『駅前』シリーズと異なる個性を発揮していた。
作品もダークにしてシリーズの基盤を築いた増村保造監督に加えて、シリーズのラインに沿って一級の娯楽作に仕上げた森 一生監督・田中徳三監督・井上 昭監督らの手腕が際立っていた。
その前後の『陸軍中野学校』ものの中でも、卓越した魅力を持った本シリーズ。
歴史の背景を感じながら、じっくり腰を据えて観てほしい。