今回の事件もそれぞれ、小さな事件であるのだが、今作に共通するのは、愛憎が絡み合った奇妙な形で起こる事件とも言える。「嗤う闇」は表題作のタイトルであるが、それぞれが人間の「闇」の部分を醸し出しているようで巧い名づけ方だと思う。また、今作から舞台になった隅田川周辺の下町という舞台(「木綿の部屋」は違うが)がまた、それにリアリティを出しているように思う。
「未練」のときにも書いたのだが、音道貴子シリーズは、このような短篇により日常がしっかりと描かれているからこその面白さがあるのだと思う。地味な事件の中で、しっかりと心理が描かれているところが、最大の長所だろう。
長編の彼女のイメージよりは人間味のあり、茶目っ気もあるという
印象を受けました。
4つの短編があるが、それぞれ個性のある人物が登場してきて
楽しませてくれる。
中でも「残りの春」に出てくる沢木。
キャリアで世間知らずのお坊ちゃまとで、かなりいい味を出している。
今後のシリーズで再登場してほしい。
「凍える牙」ほどドラマティックな展開はなく、ごくごく地味な事件
を巡る短編ばかり。中には刑事事件ですらないものもある。
しかし実際の刑事ってこんなもんなんだろうなあ。
ごくごく小さい事件で自分の非力さを感じたり、自分自身の悩みと
だぶらせたり・・・。
このシリーズは長編は大事件。短編は小さな事件というスタンスで
描かれていくのかもしれない。
4つの事件はどれも事件としての規模は小さく、はじめは「なぜこれが音道シリーズである必要性があるのか?」と感じたのですが、いずれの事件も、女性刑事が主人公であることによってぐっと重みが増す事件のような気がします。母性や女心が皮肉にも裏目に出て、事件へと発展していくケースが描かれていることによりそれを感じました。
まぁ、短編ということもあり、刑事モノにしては軽く読める作品でした。