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いつか陽のあたる場所で (新潮文庫)

価格: ¥637
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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『前科者』とひとくくりにもできるけれども・・ ★★★★★
正直なところ、自分の目の前に存在している人が、実は「前科者」ですでに刑期を終えた人だ、とわかった場合、
「もうちゃんと罪は償ったんだし関係ない」と考えられるかどうかは
自信がありません。罪にもよると思いますが。
でも、これを読んで、いろいろと本当に考えさせられました。
もちろん、そんなことはさておき、物語としても秀逸なのですが。

乃南さんがあいかわらずうまいな、と思うのは、
人間的には甘ちゃんだなあ、と思わせられる芭子の方は
ホストに貢ぐためがエスカレートした昏睡強盗罪、
(身勝手な犯罪ではありますが)で、
どちらかと言えば、前科としてはまだ軽い・・・かな??という設定に対して
人間的にははるかにできていて、犯罪の理由も全く同情できる
(夫の暴力で流産を繰り返し、やっと出来た子どもへの暴力から子どもを守ろうとした)な綾さんのほうは、
『殺人』という、やはりそれでもたぶん普通の人なら、聞けばひいてしまいそうな罪であることです。読んでいる間、この二人への感情の持ち方をずっと試されているような気がしました。

この作品で一番素晴らしい、と思ったのは、逮捕後完全に家族からは縁を切られ、仕方がない、と思いつつも「家族に捨てられた」ような気がしていた芭子が、ある事件がきっかけで、そのような事件を起こす前、自分はまったく家族のことなんか
考えてもいなかった、
「自分が先に家族を捨てていたのだ」と気がついた、というところです。
実際の事件なら家族がそのように反応しても無理ないと思うでしょうに、
読んでいると芭子視点でずっと語られることもあり、芭子を切り捨てたような家族にちょっと不公平な感想を持っていましたが、芭子とともに目が覚めました。

この作品自体は連作で一エピソードごとに一応完結し、
わりに淡々と進んでいくのですが、このエピソード前後のところは本当に涙が自然にでてとまりませんでした。
彼女たちがどのように再生への道をたどるのか、
そんなになだらかな道ではないのは次作「すれ違う背中を」を読んでもわかるのですが、ずっと続けて読みたいと思わせられる作品でした。


前日譚が読みたい。後日譚も。 ★★★★☆
精緻な文章は温かみに溢れていて情景を克明に描写しています。
二人のヒロインが心を通わせていく過程は、サスペンスでもあり、極上の喜劇でもあります。
人物の描写はリアリティに溢れていて、演劇調と思わせていながら深く、親しみやすくて
馴染みやすいです。コメディリリーフの警官も秀逸なキャラクターです。
前日譚、そして後日譚を長編で読みたいという気にさせる作品です。

いろいろな世代の人たちに読んでもらいたいな… ★★★★☆
嫌味の無い道徳の教科書…といったような読後感。
小さな町に普通に暮らしているひとたちを背景に
前科を持つ女性二人が静かに普通に生活している
…様々な不安や哀しみを胸に秘め、自分を戒めながら。
読みやすい文章で、さりげなく深く優しい内容だから、イッキに読めます。
最終話で、芭子(ハコ)が綾香の本当の姿を垣間見てからの成長するさまは
ホンの数ページなのに嬉しくなりました。
面白かったです! ★★★★☆
大好きな乃南さんの連作作品集です。

かつて刑務所に服役していた芭子と綾香

出所はしたものの世間の目を絶えず気にしつつの生活を送ります。

作品全体に派手さはないけれど、いつもながらの風景描写・人物描写の上手さには関心させられてしまう。

終始に渡って脳内映像が途切れる事がない所に乃南さんのすごさがあるんだろうな。
何も収穫はナシ ★☆☆☆☆
暗かった…前科を背負ってるんだから仕方ないが…
綾香の行動が痛々しかった…70万持ち逃げされちゃう事や、パン屋の若者に
「ばばあ」なんて怒鳴られて、謝ってる姿…。
頑張って!!という気持ちより先に痛々しさだけが残った。そして心にくるものナシ…。

乃南さんの文章はもっと深みが必要ではないでしょうか…?