様々な面で今作は『凍える牙』とは対照的だ。今作、音道刑事とコンビを組むのは星野刑事。前作でコンビを組んだ滝沢は、昔気質のベテラン刑事なのに対して、星野は最初こそ良い印象を持たせるものの、自分勝手な面ばかりを見せてくる。また、音道刑事自信も、前作はバイクを駆っての追走劇などで行動的な活躍を見せたのに対し、今作は中盤以降は人質として、そのような活躍の場面は与えられない。
確かに、犯人と人質の関係で、揺れ動く音道刑事の心情、愛人の暴力と優しさによってがんじがらめになっている加恵子の心情など見所は多い。ただ、滝沢の音道刑事への思いなどは、この作品を読んだだけでは理解できないだろうし、上に書いた対比を楽しむということも不可能だ。
その意味で、この作品だけを独自に読んだ場合は、このくらいの評価にせざるを得ない。