曲調もポップになり、ちょっとだけ勝負に出た感がある
★★★★★
2000年代になってからの前2作が佳作揃いながら全体的な地味さは否めませんでしたが、勝負に出てきた感じがします。例えば、通算13作目のアルバムとういうことで、先行シングルを4ヶ月連続して13日にリリースしたことからも伺えるように、今回は話題性にこだわったマーケティングを展開し、曲調もキャッチーなシングル向けの曲が増えました。
個人的には、M2〜4なんかのポップな流れがお気に入りです。
現実世界を克服するためのロマンティシズム
★★★★☆
前作『ザ・キュアー』以来約4年ぶりとなる通算13作目のオリジナル・アルバム。“ディス、ヒア・アンド・ナウ、ウィズ・ユー”という曲がいい。「これ、ここ、今、君」という余分なものを極限まで排除した世界での「君」との蜜月。この曲に限らずキュアーの楽曲にはこうした閉じられた世界から始まるものが多い。そういう意味で、この曲はザ・キュアーというバンドの世界観を端的に象徴していると言える。それを時に人は現実逃避だなんだと揶揄するが、それはキュアーの真実とは少しニュアンスが違う。大人の化けの皮が次々と剥がれていく終わらない偽装問題、「誰でも良かった」なんて信じられないセリフと共に繰り返される無差別殺人、不透明な政治・経済政策……極東のこんなちっぽけな島国にでさえ溢れかえっている解決を見ない問題の数々。何ひとつ信じられないようなこんな世界で、いつの間にか絶対的な「自分」さえ失ってしまいそうなシステマチックな世界で、それでもすべてを終わらせる「死」を特権化・神格化せずに現実世界を生き延びていくために、ロバート・スミスは「誰のものでもない世界を夢見ればいい」(“ザ・ハングリー・ゴースト”)と歌うのだ。自分の中に外の世界と拮抗できるほどの高い強度を持ったもうひとつの世界を育てることさえできれば、それは実際には起こらないが「起こらない」という形の真実となるのだと彼は歌っている。本作のアートワークには「この世に確かなものなど何もない。だが、それでも星を見上げれば私は夢を見ることができる」というゴッホの残した言葉が綴られている。「これ、ここ、今」という揺るぎない「自己」と「君」という唯一信頼できる世界で見る夢は、それが閉じられた場所だからこそいかに開放的なスウィート・ドリームなのかということをキュアーはやはり本作でも伝えている。学校、試験、入試、就職、昇進、退職、老後、死――自分以外の誰かに用意された当たり前の人生に何の疑問も抱かずに果てるのか、そこから「自己」を守るために単なる役立たずの妄想と紙一重の夢を見るのか――。果たして、本当に狂っているのはどっちだ?
焦燥感の意味
★★★★★
躁鬱の揺らぎの音が、意識の奥底を揺さぶるというか
思考の壁を、ディストーションで崩されるというか
表現が難しいですが、とにかくキュアーでないと
味わえない感覚というのがあります。
アルバム毎に、芯は通しながらも、結構音楽的な振幅が大きいので、
最初から”おっ来たな”と感じる作品と、
良さが判るまで時間が掛かったりする作品も多いのですが
(次の作品を聴いた後に、前の作品が好きになる場合もありました)
今回、かなり即効性が高いのでは?と思うのと同時に
何か久しぶりに、特別な物を感じました。
ここ何作かで一番好きな作品です。
圧巻の初キュアー!
★★★★★
フジロック07で初めてキュアーを目の当たりにしました。
国内盤のライナーにも書いてますが、「オールドファンとは対照的な興味本位で眺めていた若者層」…私自身もその中の一人で、正直、それまでグレイテスト・ヒッツぐらいしか聴いたことのない素人でしたが、圧巻のフジロックを観てすっかりキュアーに魅せられてしまいました。
07年からという、超にわかファンの私にとっては初のリアルタイム・リリースとなるキュアーのアルバムですが、いやはや素晴らしいの一言ですね。 インダストリアルでファンキーでスペクタルな変幻自在の音色、強烈でいて繊細な迫力。
視聴して即ノックアウト・即購入でした。
新参リスナーの私ですが、聴いていても全く「後追い」気分にならないキュアーの現在進行形な魅力を実感した一枚となりました。
本当にカッコいい。
本作は「Wish」の再来である
★★★★★
再び、この音に向かえる喜びに、只、感謝。
もう評価で★つけるんだったら、本当は前作の「The Cure」の3倍の星を捧げたい。
本作は「Wish」の再来である。
それは既に一曲目のタイトルが示しているし、アルバムのタイトル、曲順が示すテーマを比較してみれば一目瞭然だ。
The Cureの真髄は、強烈なまでの感情表現の深さにある。怒り続けたり、悲しみ続けたりした後に、ふっと力が抜けて切なくなるあの瞬間を間違いなく表現するサウンド。だから、自分がそういった感情に晒されている時ほど、聞いた瞬間にどうしようもなく切なくなるのだ。
逆に言えば、喜びの只中にある人間や、怒りや激情や野心に満ち溢れた者たちにとっては、このサウンドの意図する感情は不可解なものに映っているはずだし、音自体に珍奇な目新しさを求めている者には、何の意味も無いサウンドに思えるだろう。
だが、音の中に自らの感情を託して表現するという意味において、当代無敵の存在である事は間違いない。その名に恥じぬアルバムであることは間違いない。
あなたが「Wish」を愛してる人なら、躊躇わず買ってください。
このアルバム、捨て曲はありませんよ。