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終わらざりし物語 上

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 河出書房新社
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指輪世界の研究本? ★★★★☆
「シルマリル物語」を神話物語とすると,本書は研究本,くらいの位置付けになるかもしれません.作者をJ.R.R.トールキンのみとしてよいものかどうかも疑問です.確かに書いたのはトールキンかもしれませんが,考案中の,それぞれ矛盾のある様々なパターンの元原稿を並べただけでは本にならないし,取捨選択し,編纂したクリストファ・トールキンそのほかの名前もあってよいのではないかと思いました.
設定を考案したり,練り直したりしている最中のあいまいさや矛盾が多々ありますが,それは,伝説や神話のような,長い間口伝された物語につきものの「異説」と読むことができる...というのはファンの欲目でしょうか.
矛盾の存在が,逆に「神話らしさ」を生み出しているかも,なんて思ってみたり.
最後に読むべき1冊? ★★★★☆
一言で言うなら、J.R.R.トールキンが書きかけたメモ、遺稿などを息子が編纂し、集めた短編集。

これら上下巻は少なくとも、指輪物語(+ホビットの冒険)、シルマリルの物語を読んだ上で読むべき本です。そして恐らく、最後に読むべき本ではないかと思います。

主要な物語の裏で展開していた小さな話、前後のエピソード、祖先の設定にまつわる話などの情報や注釈がたくさん読めますので、トールキンの世界観にどっぷりの人にはオススメ。
しかし、走り書きのようなものまで含まれているために、読み難さは否めず、星4つとします。

『シルマリルの物語』を読んでいるのが前提。読破には結構な気力が必要 ★★★★☆
 J. R. R. トールキンの死後,息子のクリストファ・トールキン氏によって中つ国の世界に関する多数の断片的なメモが編集され,世に送り出されました。その一つが『シルマリルの物語』であり,本書です。ただし,『シルマリルの物語』は比較的,まとまっていましたが,本書はかなり脚注が多く,読み解くのに苦労させられます。編者が読者に断っている通り,J. R. R.トールキンの構想の段階から矛盾があったメモ等も掲載されているからです。

 「Ⅰトゥオルおよびかれがゴンドリンを訪れたこと」,「Ⅱナルン・イ・ヒーン・フーリン」は『シルマリルの物語』を読んでいることが前提になりますが,比較的簡単に読み進めることができます。『シルマリルの物語』は時間スケールの長い,壮大な物語であったため細部は省略されてしまっています。中つ国の第1紀・第2紀に繰り広げられたエルダール(エルフ)とエダイン(人間)のドラマを補完する意味で興味深い内容です。もっとも,第1紀はモルゴスとの戦いが続く時代であるため,基本的に話が暗いのですが・・・。特に,トゥーリンとニエノールの悲話は本当に切ないものです。

 第2紀の「Ⅱアンダリオンとエレンディス 船乗りの妻」は端的に言えば,仕事に生きがいを感じる男性と放置される女性のすれ違いを描いていて,時代や場所の設定が違えど,普遍的な話題だとしみじみします。「ガラドリエルとケレボルンの歴史」は矛盾するいくつかの話が並列的に書かれているため,よほど興味がある人でないと苦痛です。

 第3紀では,サウロンから力の指輪を奪ったイシルドゥアが指輪を失う事件を描いた「Ⅰあやめ野の凶事」が映画と関連が深いといえます。「Ⅳ指輪狩り」では,ガンダルフが後にフロドに語ったとされる黒の乗り手が指輪を追跡した経路が述べられている他,ガンダルフとサルマンがホビット庄を巡って戦わせた議論が収録されています。

玄人本だ ★★★★☆
指輪物語やシリマリルをかなり愛読している人の為の本ですね。
ただ、前置きが長い!挫折しそうでした。

フーリンの話などはシリマリルとかぶるんだけど
それでも飽きずに読めちゃうのはさすがです。
「フーリン一族が他のものに禍をもたらすのは
 勇気ではなく分別が足らぬ為であったか!」
なんて結構毒舌だと思った。けど当たってる!

ストーリー自体はそれぞれ面白いんだけど
注釈が多いのと、同じストーリーが並列してたりと
ちょっと疲れるかも。

熱意が凄い ★★★★★
長年未邦訳のままだったUTをサークル活動で完訳した「山下なるや」氏達。彼らの活動はトールキン・ファンの白眉だ。その一端が詳細な訳注にも表れている。

とにかく読みたかった。自己流の訳では感覚的に捉えすぎて誤訳だらけだ…ということは百も承知でペーパーバッグをくっていたのだが、これで心置きなく「終わらない世界」を堪能できる。ガラドリエルとケレボルンの物語、フーリンの子供達の物語はその長さに挫折気味だったくらいなのだ。斜め読みでは済ましたくないが、つい済ませてしまう…それも自己流誤訳の原因だった。それが解消された喜びは、私一人のものではないはずだ。
さらに、項目数は少ないが内容の充実度では『トールキン中つ国事典』を凌駕する索引にも注目したい。UTと新版Sil、文庫版追補篇があれば大抵のことが分かる。何とも嬉しいことである。有難すぎて星五つ。