これら上下巻は少なくとも、指輪物語(+ホビットの冒険)、シルマリルの物語を読んだ上で読むべき本です。そして恐らく、最後に読むべき本ではないかと思います。
主要な物語の裏で展開していた小さな話、前後のエピソード、祖先の設定にまつわる話などの情報や注釈がたくさん読めますので、トールキンの世界観にどっぷりの人にはオススメ。
しかし、走り書きのようなものまで含まれているために、読み難さは否めず、星4つとします。
「Ⅰトゥオルおよびかれがゴンドリンを訪れたこと」,「Ⅱナルン・イ・ヒーン・フーリン」は『シルマリルの物語』を読んでいることが前提になりますが,比較的簡単に読み進めることができます。『シルマリルの物語』は時間スケールの長い,壮大な物語であったため細部は省略されてしまっています。中つ国の第1紀・第2紀に繰り広げられたエルダール(エルフ)とエダイン(人間)のドラマを補完する意味で興味深い内容です。もっとも,第1紀はモルゴスとの戦いが続く時代であるため,基本的に話が暗いのですが・・・。特に,トゥーリンとニエノールの悲話は本当に切ないものです。
第2紀の「Ⅱアンダリオンとエレンディス 船乗りの妻」は端的に言えば,仕事に生きがいを感じる男性と放置される女性のすれ違いを描いていて,時代や場所の設定が違えど,普遍的な話題だとしみじみします。「ガラドリエルとケレボルンの歴史」は矛盾するいくつかの話が並列的に書かれているため,よほど興味がある人でないと苦痛です。
第3紀では,サウロンから力の指輪を奪ったイシルドゥアが指輪を失う事件を描いた「Ⅰあやめ野の凶事」が映画と関連が深いといえます。「Ⅳ指輪狩り」では,ガンダルフが後にフロドに語ったとされる黒の乗り手が指輪を追跡した経路が述べられている他,ガンダルフとサルマンがホビット庄を巡って戦わせた議論が収録されています。
フーリンの話などはシリマリルとかぶるんだけど
それでも飽きずに読めちゃうのはさすがです。
「フーリン一族が他のものに禍をもたらすのは
勇気ではなく分別が足らぬ為であったか!」
なんて結構毒舌だと思った。けど当たってる!
ストーリー自体はそれぞれ面白いんだけど
注釈が多いのと、同じストーリーが並列してたりと
ちょっと疲れるかも。
とにかく読みたかった。自己流の訳では感覚的に捉えすぎて誤訳だらけだ…ということは百も承知でペーパーバッグをくっていたのだが、これで心置きなく「終わらない世界」を堪能できる。ガラドリエルとケレボルンの物語、フーリンの子供達の物語はその長さに挫折気味だったくらいなのだ。斜め読みでは済ましたくないが、つい済ませてしまう…それも自己流誤訳の原因だった。それが解消された喜びは、私一人のものではないはずだ。
さらに、項目数は少ないが内容の充実度では『トールキン中つ国事典』を凌駕する索引にも注目したい。UTと新版Sil、文庫版追補篇があれば大抵のことが分かる。何とも嬉しいことである。有難すぎて星五つ。