ここには真実が書かれている
★★★★☆
世間では、仏教哲学と表現したりする。
しかし、本来、宗教は哲学を超え、しかも内包するものだ。
どうしてこのような表現をするのだろうか?
例えば、高校の倫理の教科書では、仏教もキリスト教も、
ニーチェやヘーゲル、孔子や孟子、或いはキルケゴール、
デカルトやベーコンなどと同列に記載されていたりする。
しかし、仏教やキリスト教などは、本来はこれらとは同列には
語ることはできない。
これらは、人の頭が考え出した思想哲学ではなく、高度な霊感によって
宇宙の真理を明らかにしたものであるからだ。
しかし、霊感を持たない普通の人間から見れば、
およそ仏教で説かれていることを理解することさえ困難かもしれない。
「信じる」とか「信じない」と発言しているレベルはここである。
しかし自ら霊感をもって釈迦の見たものがわかる人たち(菩薩や如来)は
そうは言わない。信じるも信じないもなく、ただ、それが真実であることを
知っているからだ。
前置きが長くなった。
本書は、著者がダライ・ラマに直接インタビューしたものを掲載している。
さらりと書かれているが、書いてある内容は、そこまで話してしまったか…
と感じる奥深いものまである。
ダライ・ラマの直接の発言だけではなく、著者の蘊蓄もインタビューごとに
いちいち後段に掲載されている。これらはダライ・ラマの話しを補足して
補完するものだが、読んでいて一箇所ひっかかる箇所があった。
173頁にあるように、宇宙論のビッグ・バンと仏教が対立する概念だと
著者は思っているようであるが、これは実は仏教となんら矛盾しない。
著者は宇宙論をよく知らないのであろう。
ビッグ・バン理論と仏教の無始無終の宇宙観が対立するというのだが、
宇宙は、ビッグ・バンとビッグ・クランチを繰り返していると
最新の宇宙論は示唆している。
つまり宇宙はビッグ・バンとビッグ・クランチを繰り返しているのである。
ここには始めも終わりも不明であるとしか言えない。無始無終は
いまだ否定できないのである。
一点、気になった事を指摘しておきたい。
深い真理にまで一歩踏み込んで記述されているので、お勧めしたい。
死は本当の終わりではない
★★★★☆
ダライ・ラマ本人が死について語っておられます。
基本的な内容は、死は本当の終わりではなく、
古い衣服を脱ぎすてるようなもので、次の生への変化点に
過ぎないというものです。
いわゆる「カルマの法則」を肯定しておられ、
今の生き方、考え方が次の生を決めるということです。
興味深かったのは、大切なのはその人が行った行為の結果ではなく、
どういう意図で行ったかという意思の方が大切であるということ。
たとえば、悪意を持って行ったことがたまたま人を助けたとしても、
カルマ的にはプラスにはならず、善意で行った行為が結果を伴わなかったとしても
その善意が重視されるということです。
ダライ・ラマ本人が語っておられるという点では貴重な内容で、
著者の補足説明も非常に理解を助けてくれます。
ただ、インタビュー形式でスラスラと読めすぎて、ガツンとくるものが
少ない感じが私はしたので、僭越ながら★4つにしました。