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蛇鏡 (文春文庫)

価格: ¥500
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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愛されたいと願う女たち ★★★★☆
土地の習俗と人間模様を絡ませた物語は、坂東真砂子氏の真骨頂と思います。

氏の描く恐怖が怖いのは、登場人物たちが「恐怖」を恐怖として騒ぎ立てることなく、いつの間にか、ひとつの心情として受け容れてしまうことです。読んでいる方としても、恐怖に対して「そうかもしれない」と思ってしまう。

『蛇鏡』においても、永尾玲が彼女の姉がそうであったように、同じ行動に出ることが読みとれます。「本当に玲はやってしまうのか?」とドキドキしながら読み進むわけですが、どういうわけか、玲がそこに至る心情や行動に納得してしまいます。坂東マジックとでも言うのでしょうか。

また、本著で繰り返される言葉が「愛」。登場する女たちが切実に「愛されたい」と望んでいます。玲を始めとして、綾も霧菜も清代も、皆必死の思いで叫んでいるのが胸に痛い位です。対して、男性の描写はずいぶん淡白というか、時に冷酷だったりします。例外の男性も登場しますが、いまいち唐突な感じが否めません。

男女間の「愛」について、坂東氏は幸福な結末を用意しない傾向があるように思われます。この作品でも、不吉な予感を漂わせながら完結するところは、「やっぱり」と感じます。かといって、心弾む結末であれば「えっ、違う!」と思ってしまうのですけれど。
あの世とこの世が共存する世界観 ★★★★☆
坂東さんの小説って本当に怖いのですが、読み出すととめられない!
この世とあの世。昔の日本ではあの世がこの世の反対ではなく、あの世はこの世の延長として認識されていたのに、今はあの世をこの世の反対ととらえているように思います。
坂東さんの小説の世界観には、そういった考えがまだ生きている社会でのなんともいえない怖さを感じます。
今回は蛇の模様のある鏡「蛇鏡」に魅入られた主人公が出てきます。そこに古代神話時代の日本の歴史も絡んできて非常に読み応えのある作品に仕上がっています。
読んだ後、かなりぞくっときました。
坂東真砂子のホラー小説の集大成 ★★★★☆
『死国』『狗神』に続き、田舎の隠微な風習を下敷きに描く、坂東真砂子のホラー小説。
地域には、未だ一種の閉塞感を持った地域はあるのだろうか。
そういう地域に、太古からの言い伝えがあり、それを頑なに守っている人たちがいても不思議ではない。
本来、日本人は身近な山や森を敬い、畏れ、それらの怒りを収める目的で建立された神社仏閣は多いのだから。
そういったエッセンスを生かして物語は、工業化の進んだ現代にあっては、逆に刺激的なものなのではないだろうか。

ただ、著者の作品は、単なる伝記・伝承の類を恐怖譚で終わらせるだけではない。それにまつわる人々の描写が繊細なのである。
結婚を直前に控え心揺れる主人公、半身不随を悲観する少女、それから、先祖より受け継いできた神社の跡継ぎに苦悩する宮司。
みな、心に不安を抱えた人たちである。
そこにつけこみ巣食う邪心こそが、本当の邪神であり蛇神の元凶なのかもしれない。