巧緻なミステリーストーリー
★★★★★
当時の新幹線鉄道の時刻表に基づいた巧緻な推理小説である。
森村誠一氏らしい社会性を帯びた物語に仕上がっている。内容が非常に緻密であり、捜査態勢に至るまで細々とした描写には圧倒されてしまいそうだ。
物語は新幹線車中で起こる刺殺事件から始まる。被害者は詐欺まがいの商売をする不動産屋の社長だった。捜査の段階で高級クラブのホステスが容疑者として浮かんだが、彼女には別の新幹線に乗っていたというアリバイがあった。
被害者と同席していた者は一体誰だったのか?
犯行現場から見付かった鞄の行方は?
ホステスのアリバイは成立するのか?
調べていく内に意外な犯行が明らかになっていく。二つの異なる新幹線列車を股に掛けた殺意とは? やがて殺されてしまうホステスの裏側は?
事件と事件がぶつかり合う謎めいたストーリーに、読者は紛れてしまいそうになる。
これぞ森村誠一氏ならではの推理小説に読み応えがある。