秋せつらは今日も行く
★★★★★
「魔界都市ブルース」は、第一短編集から完成度の高さを伺うことができ、続刊が楽しみになってくる。
本作も、期待を裏切らない。
とくに、アクションやエロスが激しいわけではない(無い、というわけではないが)。しかし、「魔界都市」に生きる人間または区外からやってきた人々の哀愁が、秋せつらの扱う事件を通して、克明に浮かび上がってくる。「こんな人間いるわけないだろ」とか、思えてしまう妖艶怪奇な世界が舞台なのに、自分たちが生活している場所とはそう遠くないように感じてしまうワケは、そこにあるようだ。
浮き彫りにされる「人間」。
それは、妖物であっても、菊地秀行は、愛しさをこめて描く。
シリーズが高品質度を保っている、理由だ。