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イリュージョン 悩める救世主の不思議な体験 (集英社文庫)

価格: ¥580
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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世界は紛れも無くイリュージョン ★★★★★
旧訳のあまりの衝撃からこれに手を出すのは怖かった。

村上龍の訳があまりに村上龍の世界で再構築されたってことは知っていたから

でも、イリュージョンはあくまでイリュージョン

自分の中の救世主を目覚めさせてくれるには違いなかった。

違うとしたら我らが心の友ドナルドシモダがかなりの気まぐれ屋

しかし、やっぱり僕はそれでも村上龍の訳のほうが胸に突き刺さった。

日本語と英語の言葉の文化の違いを考えると

無理に英語の構文にあわせなくていいんじゃないかと思う

「毛虫が終末と思う、その形態
            
               救世主は蝶と名付けた」
白いお米のような作品 ★★★★★
大きな盛り上がりもなく淡々とした感じで話が進む静かな物語です。
特に読んでいてワクワクするようなことはないのですが、なぜか話に引き込まれてしまう不思議なところがあります。
まるで毎日食べる白いお米のような感じでクセがなく、読み終わってもしばらくするとまた読みたくなる。何度読んでも飽きません。

旧訳の村上龍版も愛読していましたが村上龍版にあるような性的描写やクライマックスの暴徒と化す町の人々もでてこない脚色なしのオリジナルそのままの新訳の方が心静かに読めるファンタジーという感じなので私は好きです。私は旧訳から新訳に乗り換えました。

村上龍版のクライマックスではラジオでのドナルド・シモダの言動に対して町の人々が暴徒と化して襲いかかってくるような内容に脚色されていますが、オリジナルではラジオ放送の翌日に遊覧飛行の準備中の平和な雰囲気な中であの事件がおきます。
村上龍版のような盛り上がりの中でのあの事件はドラマチックではありますが、オリジナルの方が「人はやりたいことをやればいい」とうドナルド・シモダのメッセージがより強く感じられ、受けた衝撃は村上龍版より大きく、読後もいろいろと考えさせられました。
このあたりはやはりオリジナルの凄さを感じます。ただのファンタジーではありません。

文庫版になってより手軽になったので、初めて読む方にはもちろん、旧訳を読まれた方にもオススメしたい一冊です。
旧訳のままでもよかったのでは? ★★☆☆☆
もちろん行間に書かれていることの真理は同じなのだけれども、なんというか流れが違う。

村上龍ワールドのフランクな会話になれてしまっているせいもありますが、 新訳はリチャードとドンの会話のテンポが今一歩。
小説として読んだ場合の情景描写が足らないと思います。

まあ、原作に無いストーリーを足して良いのか?という問題はあるものの、 英文を日本語に訳す場合の限界が出てしまっているのでしょうか。

今一歩な作品になるくらいなら(新訳が好きな方ごめんなさい)、 新訳に置き換えないでほしいと思いましたが、 好き好きがありますから難しいですね。

一番悲しいのは、旧作がもう買えないことです。
哲学を学んだ書 ★★★★★
全てはイリュージョン。

旧訳で読んだときの印象がそれだった。
自分が受け取ったメッセージ(解釈)は
「この世界の全ての出来事が、たとえ同じ事柄でも自分の受け止め方で幸せにもなるし不幸にもなる。」
「信念を強く思い浮かべて、貫けば必ず現実のものになる。」
といったものだった。
当時は高校生だったので、その後人生の哲学的なものになった。
そういった意味で、本書からの影響は多大なものになったと思う。

さて
新約が出たということなので、広い意味での再読をした。
別に翻訳の技法については何一つ言及するつもりはないが
やはり上記で述べた様なメッセージを再確認することが出来たと思う。

印象的な違いがあるとすれば
シモダのパーソナリティーが世界一の気まぐれとして描かれている点。
「ナニ言っているんだコイツは?」と思わずにいられない。
ここまで会話が噛み合ない、なのに説得力があるのはどういうことだろう?
たとえば大勢多数の人間に
銃で撃ち殺されても仕方が無いと言えば仕方が無い。

根拠はないが
星の王子さまに近い教訓があると思う。
くしくも
リチャードバックも
サンテグジュペリも飛行機乗りだった。

空を飛んで空から地上を見下ろすと心の次元が増えるのかもしれない。
原書を正確に伝える新訳 ★★★★☆
この作品にはじめて触れたのは高校生の時だった。兄から村上龍氏による旧訳を薦められて読んだ。いたく感銘を受け、それからの自分の人生の価値観を方向付けた。

社会人になり、英語や異文化(西洋の)コミュニケーションを学び、また聖書の内容についても詳しくなった。そんな中、ネットで原書(ペーパーバック)とそれを著者自身が朗読した録音テープが入手できると知り、英語の勉強も兼ねようとして購入し、通勤電車の中で朗読を聴きながら原書に目を通した。そして旧訳があまりにも原書と異なっていたことに愕然とした。

この新訳は、かなり原書に近い雰囲気で好感が持てた。旧訳に感じられる、原書には無い猥雑さや、聖書に対する理解度の浅さはなく、原作者が表現している世界観を捻じ曲げることなく伝えることができていると思う。

旧訳は原書を原作としてテレビや映画のようにドラマ化したものでまったく別物、新訳は原書の雰囲気を忠実に訳したものであるといえるのではないかと思う。旧訳は読み易くとっつきは良いが原書とは異なるものであり、この新約は原書に近い分、イメージをしっかりとつかむのには知性の基礎体力のようなものが必要になる様に感じた。