「我が国憲法の独自性」 呉PASS復刻選書 30 「憲法義解」から約50年、憲法解釈はここまで精緻となった。国体とは何なのか、天皇とは、日本の憲法を論ずる前提となる、日本独自の概念を、法概念として明確な定義を試みる。
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A5版、353ページ。京都学派に属する憲法学者佐々木惣一の、帝国憲法下に於ける著作である。憲法に於ける文理解釈を徹底する佐々木は、日本語に立ち返り、すなわち日本の歴史、伝統に依拠した憲法解釈を提示する。昨今、普遍的意味での憲法観を背景に、日本の憲政を論断する、いわゆる護憲派の学者、識者を散見するが、彼らは「憲法」を上位概念に据え、「日本の憲法、憲政」をそれに包摂される下位概念として論ずる。それに対し、佐々木は「日本の憲法、憲政」と「憲法」を並列的に捉え、日本における憲法とは、どうあるべきなのかを深淵から論ずるのである。前者は、立法者でありながら、我が国の防衛問題を正面から捉えることなく、憲法九条を前提に、自衛隊を違憲とする、教条的な思考の「護憲」派議員と相似である。「天皇」「立憲主義」「立憲君主」「国体」とは何なのか。憲法の概念、用語の定義は明確でなくてはならない。特に天皇、国体といった概念はわが国独自のものであり、その定義は歴史と伝統を紐解く以外にあるまい。佐々木の呵責なき批判の舌鋒は、西洋生まれの「憲法」をそのまま容れようとする憲法学者に向かう。まさに現在に通用する批判である。