ここでは、批判はともかく、「1」について言及しておく。「どのような経営戦略が有効か」。これは、どのような状況でも通じるような戦略定石・戦略の一般理論を導こうとしているのではない。基本的に、経営戦略・マーケティングなど、人間を対象とする領域では、どんな状況でも通じるような普遍的な理論を構築することは難しい。仮に構築できたとしても、それは当たり前すぎる戦略・一般理論となり、他社との競争優位を構築できない。本書では、こうした方向に向かうのではなく、どういった条件の下でどのような戦略・一般理論が有効かを考える、いわば条件適合理論を模索する。すなわち、本書では、どのような条件の下で、どのような戦略が有効か、その背後には、どのような論理が存在するのか、これを明らかにするものである。こうした問題意識のもと、経営戦略を構成すると思われる領域の一つ、競争戦略、事業システム戦略、ドメインの定義、資源展開などが議論され、それぞれの中で条件適合的に議論が展開される。この中でも特に、事業システム戦略は、現代市場戦略においては多様性への適応という点から考察すべき必須の要件となっていると思われるが、経営戦略の書物の中ではなかなか見ることができない議論が展開されており、読者に新しい視点を与えてくれると思われる。
コンパクトな本なので私は必要に応じて読み返し、経営戦略の基本に立ち返るように努力しています。 しかし、全く経営の本に慣れていない方には、難解かもしれません。ある程度経営学の基礎がある方向けと思い、万人向けではないと言う理由で星4つにしています。