トップダウン型組織のメリットを説く本
★★★★☆
本書の言いたいことは「トップダウン型組織が良い」ということに尽きます。
日本企業の調整型組織を批判した内容と考えても良いでしょう。
関連部署全員の意見を調整・尊重していると結論が遅くなり、色々な人の意見を取り入れた中途半端な結論しかでないからです。
著者の主張はだいたいこんな感じです。
1.調整型の組織はスピードがない
2.調整型の組織は責任があいまいになる
3.部下の意見を吸い上げるだけの上司は自分で決断できないので、部下の言いなりになる(ボトムアップ型組織の否定)
4.上司は部下の意見を待たずに自分で現場に行って情報を集めるべき
5.現場の情報を元にしたトップダウンを行えば、ホウレンソウ(報告、連絡、相談)は不要
6.情報をオープンにして上司と部下の目標を一致させること
7.派閥は会社の利益よりも派閥の利益を優先するので、ない方が良い
8.朝令暮改を恐れるべきではない(指示の変更)
9.残業をするべきではない
10.部下を育てるのは無理。自分で成長してもらうしかない。ただし、決まり事や手順を教える必要はある。
11.部下は人前で叱れ
12.辞める部下は心良く辞めさせた方が良い。辞めると決めた人を会社に在籍させても意味がない。
※トップダウンはワンマンと異なることに注意が必要です。現場を見ないで一方的に命令するのがワンマン、現場を見てから指示を出すのがトップダウンです。
著者が外資系企業の社長なので、明らかに外資系企業を前提にした考えです。
本書に書かれたことを日本企業でそのまま実践すると大変なことになると思います。
かなり日本化している外資系企業でも通用しないでしょう。
自分はかつて中堅の電機機器メーカーにいたのですが、その会社では前述の「部下は人前で叱れ」が実践されていました。
しかし、社内の雰囲気がギスギスしていただけで、上司を恐れた社員同士がお互いに協力しようとしないという弊害もありました。協力して他人の責任までかぶるのが嫌だからです。
とはいえ、日本企業の馬鹿馬鹿しさを批判した本としては痛快です。一理あると思います。
しかし、これを実践するには社長にでもならないと無理な気がします。
新任・中堅の中間管理職バイブル
★★★★★
著者は、下着メーカーのトリンプの社長として大活躍した吉越浩一郎氏である。“ノー残業デー”や“デッドライン”で有名な著者だが、今日読破した本はこれまで手に取った本とはアプローチが異なる。
今日読破した本は、私のような中間管理職をターゲットとした本である。
(中略)
中間管理職になったので、意識的にリーダーシップに関する本を購入した。マクロレベルでは複数の良書(「最前線のリーダーシップ」、「リーダー・パワー」)に恵まれたものの、ミクロレベルではこれといった本がなかった。
こんな本があればいいのになあ…と思っていると、吉越氏のblogを通じて本書が出版されたことを知った。直ぐに購入しコツコツと読み進めていると、中間管理職になってから疑問に思っていた点が氷解できた。
この本を通じて、私は5つのことを学んだ。ちなみに、デッドラインやノー残業デーと重複する箇所は省略している。
(1)「ホウレンソウ(報連相)」は百害あって一利なし
(2)下の2割の社員には、徹底的に一緒に仕事をするしかない
(3)優秀な女性ほど完璧な仕事を目指す傾向が強く、どうしても時間がかかる
(4)トップダウンが理想。朝令暮改を恐れず、迷ったら現場に戻れ
(5)正しいことで会社にとって必要なことなら、社員に訴え続けるのみ
なお、本書は付録として巻末に「上司力チェックシート」がある。これは、本書の内容を把握したか否か、並びに現在の管理能力をチェックする確認テストを兼ねている。
私もトライしたが、本書でも仕事に対する考え方で触れているようにゲーム感覚で楽しめた。ちなみに、点数は68点だった。
最後に、本書は新しく管理職に就くことになった方のバイブルとして最適である。新任中間管理職研修(?)のテキストとしては最適であり、値段も1,000円(税込)とお手頃である。
私の場合、中間管理職になってから1年後にこの本と出会ったが、1年早ければ試行錯誤をせず、半分以下の期間で現在の状態になったと思う。
中間管理職は、経営者マインドをもて。リーダーたれ。
★★★★☆
日本的経営における会社組織の、管理職、上司/部下という
構図は、グローバル化、アングロサクソン化する世界の中の
競争には勝てない組織。
そんなことを背景に、吉越流、管理職(経営幹部を含む)たるものは、
どのような資質をもつべきか。どのような行動規範を示すべきかを
説いた指南書です。タイトルだけからの印象は、なんか「社員を奴隷の
ようにこきつかう」イメージになっていますが、そうではなく、ゲームと
しての仕事を遂行するためには、個々人が必死で成果を達成する、能力と
自己責任をもて、という叱咤激励の書です。
いつものように、吉越流の考え方、「仕事はそのうち終わる」
「人生は仕事のための生きているわけではない」「残業をしなくても
成果は出せる、生産性を上げられる」「仕事はゲーム」など、他の著作で
あますことなく開陳されている(日本的組織人の発想では)大胆と思える
メッセージがある。
そんな枠組みを考えた場合、自立した個人が、役割として仕事を遂行し、
責任と能力を持って遂行する。それは、自分の生きがいのため、とか
部下や組織のため、という情の論理でなく、あくまでも会社の業績達成
のためのいベストを尽くす、という吉越流のお話。
これを、会社の部、課、係など、グループやチームで遂行する場合、
その組織力学が、従来日本的会社組織の力学は、ちょっと違うのでは
ないか?という視点から、さまざまなテーマを斬っていきます。
「部下に仕事を任せなさい」は、部下に権限と責任を委譲し、自分で
責任をもって仕事を遂行できるようになることが、会社にも本人にも
いいことだと説く。それができないのは、上司、管理職が単に自分の
能力でなく、地位を温存したがためで、幹部失格と言い切ります。
他に、管理職がリーダーたるためには?部下はあなたを見ている、など
言われてみれば確かに斬新なメッセージが再びです。
本書を読むと、他の吉越氏の著作で印象をもった、「欧州流な人生観」
「仕事より人生の楽しみを優先する」「優雅な人生」的な、のんびり
した雰囲気は誤解で、やることは、死に物狂いでやり遂げ、その褒美と
しての「本生(ほんなま)」、自分のライフなのかもしれない、と
いう感想を強くしました。