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タクシー (角川文庫)

価格: ¥580
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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幽霊に好かれるタクシー ★★★★★
このタクシーは、幽霊に好かれているらしい。
しかも、何度も危ないところを助けてもらっている。

本書の前半は、スリルの連続だ。
「動」を通り越して、「躍動」とでも呼びたいくらい、ダイナミックだ。
そして、タクシーは東京から九州を目指す。

後半は牛尾刑事らが登場して、推理小説の様相を見せるが、
この作品、ホラーなのか?推理なのか?分類はよく分からない。
幽霊話が根をおろしており、普通の推理ではない事は確かだ。

ただし、あまり恐くはない。
世知辛い話ではあるが、生身の人間の方が余程怖い。

そして、ラストには温かみがある。
一期一会が原則であるタクシーと客との関係にも、例外はあった。

独特な雰囲気の、少し幻想的な作品だ。
物語の筋が面白い ★★★★☆
タクシードライバーを主人公においたサスペンスものですが、物語の筋立てが非常に素晴らしいと思います。また、タクシードライバーだけに限らず幽霊という目に見えない存在もこの物語に大きな鍵を握っています。
日頃私たちが何気なく目にするタクシーですが、そのドライバーの苦悩や過ごし方等も作品の中に表れていて、どこか共感を抱かせられます。

只気になったのは、主人公蛭間が目的地に到達してからの警察の取り調べや警察相互の連絡の不備、また蛭間が犯人グループに捕まって拷問を受けている時に幽霊に救われる内容に、どうしても作者の都合のいいストーリーになっている点です。
こういうところで作品の重みが感じられなくなるのは残念です。

森村氏の作品は他の売れっ子作家にない質の高さを感じます。特別驚くような仕掛けや推理ものではないのですが、読んでいるうちに作品の中に吸い込まれそうになる魅力があります。
皆さんも森村作品を多く手にとって読んで下さい。

幽霊だからこそのハートウォーミング ★★★★☆
幽霊が出てくる話は、幽霊の必然性があるなら大いに話を盛り上げるものですね。死んだ美女の幽霊の無念の想い、主人公蛭間に対する強い感謝の気持ち、周辺の幽霊たちの数々の善意。それらが、生きた人間のそれではなく、死んでなお伝えたいメッセージであればこそ、大きなインパクトとなって読者の胸を打つのだと感じました。

主人公はタクシードライバーの蛭間。客とは偶然の出会い。二度と会うことはないが、客は確かに人生のカケラを車の中に残していく。それを垣間見るのもまた密かな楽しみだ。彼の車には、不思議と幽霊が集まる。はっきりとは見えないが、別に悪さをするわけでもない。そんな幽霊に対する寛大さが幽霊を集めるのか。彼は幽霊のゴヒイキさんなのだ。そんな彼の車に胸を刺された美女が乗り込むなり、息を引き取った。彼女の遺言で東京から九州の実家までタクシーで送ることに。しかも彼女を刺したらしきベンツの一団が追跡してくる...

めくるめくストーリー展開に息つく暇もないくらいのスピード感で、一気に読みきってしまいました。後半は美女を刺した女性の犯人探しでミステリーですが、最後は美女の霊の感動的な・・・、おっとこれ以上話すのは罪ですね。