内容的に古いが、役に立つ部分もある。
★★★☆☆
本書は5章からなり、各章において執筆者が異なる。1章『総論・CIOに求められる機能と役割』と
2章『効果を創出する』は参考となる箇所が多く、巻末の参考文献リストも役に立つ。3章・4章は
本書が2007年の出版ということもあり、Web 2.0や内部統制など当時の世相を反映したもので
2010年の流行となっている『クラウド』や『IFRS』を視野に入れた記述は見られない。
5章はコンサルタントによる典型的な抽象論とも言うべき内容にとどまり、巻末の参考文献の
少なさもそれを反映している。また、4章『リスクを軽減する』が容量的に軽視されているように思え、昨今の
情報流出対策などに触れられていないことが気にかかる。そういう意味でこの本は『旬』を過ぎている。
本書は価格がそれほど高くもなく、内容のつまみ食いになることを覚悟の上であれば役に立つと思われる。
CIOの役割を概観できる良書
★★★★☆
CIOの役割の概要を分かりやすく整理しており、その意味で良書といえる。
ただ、IT調達の章においては品質ベースや価値ベースの価格設定が適正な価格の形成を実現するとしているが、何を適正と呼んでいるのか、実際にそういった価格形成が可能なのか等、疑問の残る箇所もある。また、多くのCIOにとっての現実的な最大の悩みは情報システム部門を今後どうしていくのかという点にあると個人的には認識しているが、そのあたりに踏み込んだ解説もほしかった。
気になるテーマがあればお薦め
★★★☆☆
CIOという大きな範疇においては、それぞれ必要なテーマであるとは思われるが、個々の中身に一貫性が感じられない。
テーマの中に気になるものがあれば、その部分をピックアップして読むのには適当ではないか。
CIOとは誰のことか
★★★★★
CIOに関する著書も多く出版されている。もはや、紹介や啓蒙の本は要らない。CIOが何者かの議論は不要だ。ほしいのは、どのような機能を担わせるのか、わざわざCIOと称させて何をさせるのか、である。
この本の興味はむしろ、そこにある。CIOの重要な役割として、効果を創出する、効果的なIT投資を行う、リスクを軽減する、組織を強化する、に集約してさまざまな議論を展開している。いづれも、有益な考察である。
これからは、この本をベースにCIOの新しい議論が進むことが期待される。
ミシュランの3つ星レストラン並み
★★★★★
この本は「読まずに死ねない」企業経営をITから捉えた本である。
まず、CIOについて従来は情報システム担当(役員)としての一面から捉えるのみであったが、本書では投資による効果をどう出すか、組織経営にITをどう活用するかといった企業経営の本質に迫るものとなっている。また、Web2.0をCIOという視点から捉えたのも極めて斬新である。
私はとあるITユーザー企業の1社員であるが、かつてこの本の著者であるコンサルタント諸氏にコンサルをお願いしたところ実に的確に課題を指摘し、その後弊社の業績はV字回復を果たした。今後とも本書の続編が続くことを期待したい