科学的、かつ論理的にクチコミを扱った本は多数あるが、本書はあくまでも著者の成功体験がベースであり、クチコミの主役となる女性の、「なんとなくイヤ」、または「良さそう」という直感が、どれだけ購買に影響を与えるのかが追体験できる。その体験や事例を、感覚論よりもロジックを重んずる男性にも理解できるように説明しているのが特徴である。文章は論理的であるが、事実に裏付けられているという勢いや自信も感じられる。
ところで、書名にもなっている「クチコミュニティ・マーケティング」とは、集団のなかでクチコミを発生させるしかけやしくみを指す、著者の造語である。クチコミュニティは顧客の集まりではなく、あくまでも「共通の価値観を持った人たちの集まり」であり、「購買の意志決定に至るときには、確実に大きな力を発揮する」集団である。クチコミュニティによるマーケティングが即効的な広告宣伝効果をあげるかどうかは疑問であるが、商品に対する信頼や共感を高め、じわじわとファンを増やすためには有効だといえる。クチコミの実践例を知りたい人におすすめしたい。(朝倉真弓)