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もう切るわ (光文社文庫)

価格: ¥500
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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凡庸なのに切ない ★★★★☆
井上荒野の小説を初めて読んだ。はじめの数ページはあまりにも凡庸で、正直すぐにでも退屈して投げ出したくなるような本だと思ったが。愛人と妻の交互の描写。夫が健康なら、それぞれが別の人生を歩んだに違いないのに、夫がガンに冒されることで、互いの感情が揺れる。

読むにつれて感情移入する。人間って本当はそれが普通の状態なのかもしれない。互いに愛し合っていると確信している夫婦であっても、長い時間の瞬間を切り取れば心が離れたり、孤独であったり、ひどく切なかったり。そしてそれでもやはり愛していると心底思う。大人にしかわからない感情の揺れを、こんなふうに描写できる作家はなかなかいないのではないかしら。

成熟した大人向けのラブストーリー。
孤独な人 ★★★★☆
妻も恋人をも持ちながら、ガンで死んでいた歳さんは、とても孤独な人だ。
しかし彼は、一見どうしようもないような男だけれど、その孤独をきちんと受け止め、一人死んでいった。
大人の愛の話。
人は誰かを愛しても、結婚しても、どうしようもなく孤独だ。
それを肯定していくことでしか、本当の意味で、人生、を全うできないと感じた。
死に逝く者と残される者。
生きるとは、死ぬとは、愛するとは。
そういうことをあたり前の日常を描写することで、私たちの前に曝している。
せつないの。。 ★★★★★
なにがせつないって、内容というよりも、作中に全体に漂う雰囲気が。
二人の女の何気ない日常が。しぐさが。息遣いが。言葉がせつないんです。

他の方も書かれてますが、とにかく大人。
どこがどうという内容にもかかわらず、入り込めてしまう。
著者の卓越したセンスと力量を感じた。
もうこの人のなにげ無い言葉の選び方にいちいちやられてしまう。


読み終えると胸が苦しいような余韻がしばらく残ります。

「歳さんはどこの人?」

「歳さんはここの人」

読み終えた時に、自分が井上荒野の世界に酔ってしまっていたことに気付く。
大人っていいな、素敵やん。。って思える作品。
大人の静かな恋愛 ★★★★★
30代以上の大人の恋愛が静かな流れで描かれている会心の一冊。全大人必読の書です。内容もさることながら、言葉のセンスがすばらしい。「スイトルヨ」なんて読めば「あー」と思ったが、一番初めに目にしたときに自分の頭に浮かんだ意味とのギャップに、ただ「参りました」というしかなかった。心情描写についても作者の視線の正しさというか清潔感というか、びっと中心を打ち抜いている。
甘いだけの、ご都合主義の、性愛だけの恋愛物に飽き飽きしている方はビターな本書を手に取ることをオススメします。
大人だな~~ ★★★☆☆
これは、一人の男性を正妻と愛人で取り合っている話でもなく、男性の闘病日記でもない。例えばモームや有吉佐和子(敬称略)のように「どうだ!」っていう落ちもなく、悲惨さも感じなかった。

読後の感想は、大人だな~~ってこと。メインの登場人物がそれぞれ、今の問題や、不満の原因を自分でそれぞれ抱えて、それなりに消化しようとしてる。

だから、三角関係なのに、修羅場なんてない。で、ふと思ったのですが、こういう関係で修羅場になるのは、女が男を愛してるか・してないか、じゃなくて、その当事者がどれだけ、自分の今の立場や状態を、自分でちゃんと抱えられないからじゃないかなって思った。そういう「悟り」とまではいかないけど、そういうことわからせてもらった。愛情の高低浅深じゃなく、自分で問題を抱えられない人が、わめいて、自分以外の色々なもの:世の中のルールや、男の良心や、周囲の同情、などに訴えたり責めたりして、味方を作ろうと思うから修羅場になるんじゃない?なんてね。

私はどちらかというと、どうだ!って落ちがある作品が好きなんですが、なんだか読めました。