移り気な生きた人間としての消費者を理解しなければ、すぐれたマーケティング理論も机上の空論に終わってしまう。本書は、この不確実な人間の側面に着目することで、サービスを売り込むための、より確かなマーケティングの考え方を提案しようとしたものである。
構成は全7章。まず1~3章の「リサーチの限界」「マーケティングのウソ」「顧客満足とは何か」では、従来のマーケティングのプロセスや考え方に再検討を加える形で、著者独自のマーケティング哲学を明らかにしている。それは、周囲の状況に流されやすい、直観に基づいた行動をとる、といったデータや合理的観点ではとらえられない人間の性癖を重視するもので、そこからマーケティングにおける格言や警句を導き出している。
次の4~7章では、「価格」「ブランド」「見た目」「関係性」の各ポイントを、サービスを売り込む「4つの鍵」と位置づけて解説を行っている。現在の消費者主導の傾向を逆手にとった考え方もあり、価格が高いほどモノはよく見える、安く売るな、一見の客は避けろといった主張は、デフレの消耗戦にある小売事業者には新鮮に映るだろう。なかでも、人と人とのつながりをいかに与えるか、つまり顧客との「関係性」をいかに築き、持続させるかが、サービスの売り込みに必須だとした点は興味深いものになっている。最後に、そのための「8つの鍵」も示されている。ただ、この8項目がどういう基準で取り上げられているかが判然としない感も残った。「関係性」の体系について説明的な記述があれば、もう少し理解が深められたかもしれない。
全体にサービスを売り込む方法よりも、従来のマーケティングにおけるウソを暴く手際のよさが印象に残った。ステレオタイプなビジネス思考を疑ってみる精神が、ここから学べるはずだ。また、これまでマーケティングで成果が上がらなかった人や顧客をどう囲い込もうかと悩んでいる人は、本書で新たな着眼点が見つけられるだろう。(棚上 勉)
優良著である。
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サービスを売り込む鍵についてのマーケティング本。サービスマーケティングの専門家。
見えないものを見るも鮮やかな手触りへ
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変化の早いマーケティングの世界で10年前の書籍ですが再販されたのには理由があります。
目に見えるもの販売する物販に対し、目に見えないもの(インビジブル)を売るサービスについて語った一冊である。
ジョン・クラカワー氏の空へを読んだのも本書がきっかけでした。
本書は目に見えないものを扱う際のさまざまな洞察する視点を提示してくれる。
・顧客との接触ポイントを見直し、各ポイントを最大化させる
・リサーチとは新たな発見というよりは偏見や確信をより強固にさせるためだけ
・価格が何を語るか?
・ブランドの3つの特性→方向性、広がり、奥行き
・言葉より写真
・わかりやすく話すこと、これで充分ということはない
・時間性料金の問題
・普通の仕事のうそ
マーケティングにありがちな顧客を機械的なターゲットになどと一言も言っていない点がすばらしいと思いました。
サービスの向こう側にいる人間ありきというスタンスは何年経とうが変わらないのでしょう。
大変示唆に富んだ一冊。
マーケティングの基本がわかる良書
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本書はインビジブルマーケティング「見えない商品」つまり「サービス」を
いかに売るかという書籍です。サービスのマーケティングというとニッチに
聞こえますが、コンサルタントやソフトウエアなど現代の商品は目に見えな
いものが多くを占めています。そういった意味で発刊は少し前ですが、現在
のビジネスに非常に有効な本です。
内容としては、マーケティングにおいて陥りやすい問題点などが、わかりや
すく記載されています。深く学びたいマーケティングマニア向けではありま
せんが、簡潔にまとめられていて良心的な作り方になっています。
語りがおもしろい
★★★★★
まず表紙がいい。セス・ゴーディンやトム・ピーターズを彷彿させる。
語りがいい。読み手の心を読んで引きつけるちからがある。
原理原則を押さえているあたりはそこらにある雑魚本とは一線を画す。
マーケティング関連に興味がある方なら目を通す価値は十二分にあります。
マーケ界のトム?
★★★★☆
特に、「これは初めて聞いた」というような内容はありませんんでした。
過去のマーケ論を切り口を変えて、本にした感は否めません。
しかし、その切り口が斬新。
過去の常識を否定しながら、持論を述べるあたりは、トム・ピーターズを意識しているのか???(本文にも出てきますが)
顧客との関係性についての記述は読む価値あります。