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水神(上)

価格: ¥1,575
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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神は普通の人に宿る ★★★★★
 田舎に行けば大きな川の側には、ひっそりと石碑に刻まれて、水神様が祭られている。今まで水害から村の暮らしを守るために、人が神頼みをしているものだと思っていた。間違いではないだろうが、この本を読んで、本当は治水工事などをした昔の名もなき人々、その一人ひとりがまさに水神と呼ばれるのにふさわしいのだと感じた。
 筑後川に堰を作って水を引くことを決意した4人の庄屋、地方藩の郡代である下級武士、工事に携わった百姓、それら大勢の人々の苦闘と栄光を描いた傑作である。人のために生きる、生活を捧げるという行為が、現代を生きる我々の生き方に一石を投じる。流されるなよ。何が人間にとって大切なことなのか、我々は問われるはずである。
 蛇足だが、本書に数々出てくる昔の料理の描写がなんとも旨そうで、匂いや舌触りが感じられて、付け加えずにはいられなかった。
水を引くために命をかける姿に心打たれる ★★★★★
NHKの週間ブックレビューで合評の対象になった一冊で、興味を引かれて読んでみたが素晴らしい作品だ。上下巻合わせると500頁超の大作だが、全く苦にならず最後まで一気に読み通した。

舞台は九州の有馬藩の江南原と呼ばれる地域の村々だ。この地域は筑後川を始めとするいくつかの川に囲まれているにも拘らず、地面の高さが川面より高いため川の水を引くことが出来ず常に水不足で穀物の生育は悪く、この地に住む百姓は有馬藩の中でも最も貧しい生活を強いられている。冒頭は元助と伊八という二人の百姓の暮らしが描かれるが、この二人の仕事は「打桶」と呼ばれ、朝から晩まで毎日川の水を桶で汲み出して田んぼに流すというもので、これを一生続けることが決まっている。元助の目を通して描かれる百姓の生活はとにかく貧しく、常に腹を空かしている。

絶望的な境遇を変えようとして立ち上がったのは、藩の殿様でも奉行でもなく、5つの村の5人の庄屋だ。中心人物の助左衛門は、筑後川を堰きとめて水路を作って村々に流すことを考案し、反対する村々の妨害にあいながらも、賛同する他の4人と一緒に藩に工事の嘆願書を提出する。嘆願書は聞き入れられたが、工事に要する莫大な費用はすべて庄屋の自己負担で、なおかつ失敗した場合には責任を取って磔の刑に処せられるという厳しい内容。

自らの身代を潰し、命を賭けても、後世の子孫によりより生活を残したいと戦う庄屋たちと、その姿に打たれて協力する武士や商人たち、そして貧しさにもめげることなく懸命に働く百姓達の姿は、壮絶であるが美しくそして尊い。前を向いて生きる人々の姿に心打たれた。

泣きすぎて目が腫れました。 ★★★★★
図書館で見つけて読みました。書評も他作品も読んでいませんでしたから、この作家さんのものはこれが初めてです。
江戸時代のつましい暮らしぶり、その中でも貧しい村々の暮らしに心が揺さぶられました。それでも我慢強く日々生きている人々に好感を持ちました。
なかでも元助くん(と君づけでいいの?)は真っ直ぐで正直で無骨なところがかわいらしかったです。
下奉行、五庄屋、村の百姓たちが皆誠意を持って正直に生きていて、思いやりと感謝の心をもち、五庄屋と下奉行の菊竹様は百姓の為を思い、行動し・・・島原の乱で命を落とした人を想ったり残されたものの生活を慮ったりするくだりにも、他にも細かいところでも泣かされました。他の方のレビューにもありましたが、お涙頂戴のお話が個人的に好きなのかもしれません。
上下とも一気に読みました♪
渾身の傑作 ★★★★★
感動しました。長い作品でしたが、引き込まれました。

まず前半は、江南原の百姓たちの貧しい暮らしぶりが描かれ、
その中での、主人公の5人の庄屋たちの真摯な姿に胸を揺さぶられます。
上巻の一番の見せ場は、5人の庄屋たちが、藩のお偉方を前に堰の工事を願い出る
口上のくだり。気迫のある言葉に圧倒されました。

下巻で堰の工事が始まってからは、難局を上手く乗り切って欲しいと読み手の私も
はらはらしながら、読み進めました。
終盤、涙なくしては読めない箇所もあり、この主人公たちには心から頭の下がる
思いがしました。

作者、帚木さんは闘病しながらこの作品を書いたそうです。
現在はお元気になられたとの事でしたが、これからも良い作品を書いて下さい。
「熱い」感動を期待するとガッカリするかも、です。ネタばれもあり。 ★★☆☆☆
日経の日曜書評で本書の評を読んで気になって早速読みましたが、、、、帚木氏の過去の作品「閉鎖病棟」「三たびの海峡」「逃亡」「総統の防具」などで感じた「熱い熱い感動」を期待すると拍子抜けするかもしれません。

「国銅」と同様、淡々としすぎるくらい淡々とプロジェクト成就に向けて物語は進みます。(詳しく書きませんが)プロジェクト完遂のため命をささげる「ある人」が残す遺書のくだり(その内容そのものも含め)も帚木作品の「いつものパターン」で氏の作品を以前から読んでいる読者には見え見えの展開。「熱い感動」と「お涙頂戴」は紙一重だなあ、と痛感。水利プロジェクトそのものが難事業であることは想像はつくのですが、淡々と進み過ぎてその難易度がいまいちピンとこないのも盛り上がらない原因の一つとは思いますが・・。

そんなにヒネくれずに虚心坦懐で読めばそれなりに面白い歴史娯楽小説であるとは思いますが、「1,000枚渾身の書き下ろし」はそもそも上下巻に分けるような厚みのある話ではなく、一冊で1,800円くらいだったら不満感も多少は減殺されたとは思います。