朝鮮出兵に喘ぐ諸大名の苦悩、死を迎える秀吉
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朝鮮出兵の実情は、「(シナの征服事業)それに伴う困難は、あまりにも明瞭であり、その危険はいとも切迫したものであった。そしてさらにそのような考えを一同に強めさせたのは、日本中が彼(関白秀吉)に対して叛起する危険があることが明らかに看取できることであった。なぜなら関白が日本のすべての君侯や武将を専制的に支配していることと、彼らを母国、領地、妻子、親族、家臣から離別せしめ、その悦楽を奪い、祖国から放逐し、生きてふたたび帰郷することはほとんど不確実で、まるで眼前の死に向って直進させるに等しく、明白な危険と災厄に身を曝させることとでは、くらべものにならないからであった。」(第35章)と述べられている。そんな中、小西行長の朝鮮出兵における役割は読者の目を引くだろう。
関白秀吉の最期は、付録フランシスコ・パシオ師の報告によると、重立つ諸侯の前で家康に後継者秀頼を託し、秀頼成人後の政権返上を頼む憐れな姿が描かれている。