インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

ヘッセからの手紙―混沌を生き抜くために

価格: ¥9,400
カテゴリ: 単行本
ブランド: 毎日新聞社
Amazon.co.jpで確認
ヘッセは文学者という範疇にはおさまらない ★★★★★
本書はヘッセの書簡集で、友人や家族や読者に宛てた181通の手紙が掲載されている。なかにはロマン・ロランやトーマス・マン、シュテファン・ツヴァイクなどへの手紙も含まれているが、無名の真摯な読者に対する返信に注目すべき言葉が綴られていたりする。

ヘッセはほんとうの意味での詩人、探求者だ。彼の小説にフィクション以上の力を感じるのは、彼自身がそれを生きようとしているからだろう。

ぼくが学生のころ出会った人は、『デミアン』を読み終えて、「このままではいられない」とそのまま家を出て放浪の旅に出たと話していた。それだけの変化をもたらすエネルギーが、ヘッセの作品には秘められている。

その『デミアン』と『シッダールタ』の関係について、書簡のなかで非常に明晰な説明がなされていた。

「この本(『デミアン』)は個性化の過程を、人格の成長を強調しています。(中略)もっぱら自分自身に対する忠誠心だけが求められるこの過程では、そもそも用心すべき敵はただこれだけーーすなわち、因習、怠惰、市民性だけです。因習となった嘘の神を受け入れるよりは、すべての悪魔や悪霊と戦った方がましです!(中略)
我々の課題と使命の別の面、もっと重要で神的な面も私が追究していることを、あなたは『シッダールタ』からご存知です。すなわち人格を乗り越えること、神に満たされることです。私自身この二冊の本は決して矛盾するものではなく、同じ道に連なる作品だと思っています」

ヘッセのもとに届いた手紙の三分の二は若い人からのもので、それに次いで多いのが老年層だという。それは、ヘッセが個性化の過程の擁護者であり、個である人にのみ可能となる個の超越を見すえているからだろう。
行ったことを書き、書いたことを行う ★★★★☆
1997年(ヘッセ生誕120周年)、NHKでヘッセの手紙を扱った番組(ETV特集『もう一つの車輪の』)が放送されたが、その企画にも影響を与えた本書。ヘッセは生涯に3万通を優に超える手紙を書いたということだが、本書にはトーマス・マンやロマン・ロラン、シュテファン・ツヴァイクなど著名な人物をはじめ、家族、読者に宛てたおよそ180通の手紙がおさめられている。

ヘッセの手紙は、礼状のようなものから、依頼文、近況報告、時局について語ったものなど様々だが、どれも本当に誠実な言葉で書かれている。ナチ党員となった親友、ルートヴィヒ・フィンクに送った手紙などは簡潔ながらも深い感動をおぼえる。またヘッセは、息子が悩みを記した手紙を送ってくれば、まるであのデミアンのように、「自分自身になる」よう優しく諭している。巻末の解説でフォルカー・ミヒェルス氏が、「行ったことを彼(ヘッセ)は書き、書いたことを彼は行った」と語っているが、まさにその通りで、息子宛ての手紙を読んでいると、まるで『デミアン』の一節のような印象を受ける。実生活と著作の一致という点で、ヘッセは本当に誠実な書き手だったことがよくわかる。

本書は、一般の読者にとっては、人生のよき相談者になってくれれるだろうし、ヘッセのことをよりよく知りたいという人にとっても興味の尽きない内容になっている。巻末にはズーアカンプ書店で全4巻のヘッセ書簡集を編集したミヒェルス氏の非常に的確なヘッセ論も収録されているので、是非一読をおすすめしたい。また本書には、続刊に『ヘッセ 魂の手紙―思春期の苦しみから老年の輝きへ』(毎日新聞社)がある。