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バルバラ異界 (4) (flowers comics)

価格: ¥530
カテゴリ: コミック
ブランド: 小学館
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30年後も傑作として語り継がれるだろうか? ★★★★☆
本作品は、第27回日本SF大賞受賞作である。確かに読んでみて面白かった。しかし、だからといって、本作品が萩尾SFの最高傑作ということにはならない。
私にとっての萩尾SFベスト3は、『スター・レッド』、『百億の昼と千億の夜』、『11人いる!』で、いずれもSF大賞が創設された1980年よりも以前の作品であり、もしもこれらの作品が発表されたときにSF大賞が存在していれば、きっといずれの作品も受賞していたに違いないと私は思っているし、『マージナル』や『銀の三角』など、作者には優れた作品の枚挙にいとまがない。

それは、『SF Japan 2007春号』での選考委員の選評でも、5人の委員のうち3人までが本作品は過去の傑作を凌ぐものではないとの共通認識をもっており、新井素子は「SF大賞は、今回選考にあがっている作品の中で選ばれるべきであって、過去のその作家の作品を比較対象にするべきではない」との他の選考委員の言葉を聞いて、なるほどそのとおりだと思い直して『バルバラ』を受賞作として評している。また、笠井潔に至っては「これまでの業績を加味した授賞である」とまで言い切っている。おそらく、萩尾SFをよく知る人ほど、同じ感を抱くのではないかと思う。

『スター・レッド』にせよ『百億・千億』や『11人いる!』にせよ、いずれも約30年前の作品だが、いずれも深い感動を味わい、その感動をまた味わいたくて何度も読み返しては、また新たなる感動に包まれるという繰り返しで、それゆえに30年の歳月を過ぎても、これらの作品は心に残る名作であったと言い切れるのである。

今はSF大賞受賞により皆に素晴らしい作品だ、傑作だと褒め称えられているが、果たして30年後も皆が同じように評価するだろうか? 私には人々の記憶からは早くに忘れられてしまう作品のように思われてならない。
素敵なヴィジョンが羽ばたいている、萩尾望都ワールドを堪能しました ★★★★☆
 夢と現実が、過去と未来が交錯するストーリー。最後のこの第4巻では、青羽(アオバ)の見ていたバルバラ異界の夢が、過去・現在・未来の「時」の座標軸上のどこに位置していたのかが明らかになります。と同時に、パラレル・ワールド(並行世界)のひとつが消滅し、別の世界へと移行するモチーフも現われるので、頭の中がかなりしっちゃかめっちゃかになりましたよ(笑)
 緑の地球の「今」と、赤い火星の「未来」がつながり、織り合わされるエピソードも素敵ですね。そこにまた、異星の生命体の長く果てしない記憶がからんでくるあたり、ワクワクする話の展開でした。
 萩尾望都さんの本シリーズのラストの章「遠い昨日から遠い明日へ」(【月刊flowers】2005年8月号に掲載)を読んでいて、「ああ、これは、ブラッドベリの『火星年代記』の中の「夜の邂逅」の物語みたいだ」と。キリヤという少年の運命の変転に、「夜の邂逅」に出てくる向かい合うふたり≠ニよく似たものを感じたんですよ。
 うーん、ネタバレしないようにぼかして書いているので、「なんのこっちゃ?」でしょう。とまれ、タイム・トラベルものや、フィリップ・K・ディックのパラレル・ワールドものがお好きな方でしたらきっと楽しめるに違いない、魅力的なアイデアとヴィジョンが羽ばたいている物語。全4巻、時をおかずに一気に読むのが吉。
星五つでは足りない! 「未来の夢を紡ぐ」世界に拍手! ★★★★★
 登場人物の肉付けがはっきりしていて、どこを切り取っても独立したエピソードになるので、誰に照準を当てればいいのかわからないくらい読み込める作品です。これがマンガだとは思えない切り口が斬新で、心理学的にもSFとしても、お勧め。親子の葛藤、親としての成長、離婚、思春期、老い、研究など、色んな角度から眺めてもそれぞれ面白い。短い作品なのに本当に盛りだくさんです。しいて言えば、タカとキリヤの父であるトキオが夢に入り込む才能を持っていることぐらい。
 地球以前の宇宙の歴史が遺伝子の中に隠れていて、癒しと再生の夢を見ながら眠っているという壮大なロマンの中で、「それぞれの人生を生きればいい」と潔く言い切る、ななみさんが好きです、個人的には。若返ってるんるんマリーエンバートしている時も、老いてもエズラを忘れられず愛して悩んでいるところも。
 未来の夢を紡いでいた青葉は、犠牲になった巫女よろしく消えていくけれど、それこそ死が生を支える象徴のように思えます。萩尾作品によく出てくる人物像の一人として神聖な死を迎える存在です。最近の望都さまの作品は私にはしんどかったので、今回は「銀の三角」以来はまりました。
文句なしのお勧め! ★★★★★
いつも思うのですが、萩尾さんのラストシーンはとても心に残る余韻のある終わり方ですね。今回は、余韻があるどころか、衝撃的過ぎて、しばらく、頭がグヮングヮンしていました。この感じは、トーマでユーリが去って行ったような、ポーでアランが死んでしまったような、メッシュで突然ミロンと別れてしまったような、マージナルでキラが消えてしまったようなそんな衝撃と、そして、その先の未来を一生懸命考えてしまう、そんなラストと同じ種類のものです。
萩尾ワールドを200%堪能できるすばらしい作品です。いつもこんな作品が読めた自分の幸福を心底感謝させてくれる萩尾先生、これからもすばらしい作品をどうぞ作り続けて下さい。
登場人物はみんな魅力的でしたが、個人的には、キリヤ(もろに好みのイケメンだった)とななみさん(及びぶっとんでいるマリエンバート)が大好きでした!
なんと心地よい悲しみか。 ★★★★★
前作の反動か、軽やかな絵で軽やかなテンポでサクサク進んでしまうペースに慣れたと思ったら、キュウッと読者の胸を掴んで物語は未来に去ってしまった。埋められることはないだろう大きな悲しみを抱えて生きることになった彼同様我々ももうあの魅力的な島へ行くことは出来ない。あの人々に会うことはかなわない。今は、わが子に悲しい贈り物をする、父親になりたかった、なれなかった彼の気持ちに寄り添って泣こう。
本巻で完結ということを知らずに読み始め、途中で気付いたうっかりな私は、風呂敷の畳み方のあまりの早さに「モザイク・ラセン」の洪水みたいなことになるんじゃないかとハラハラしましたよ。大丈夫だったけど!
多くのベテランがかつての才気や居場所を失っていく寂しい状況の中で、こうして常に最新作が新たな代表作となっていく萩尾先生は改めて特別な才能の人なのだなぁと思い知りました。