テクニックは超絶というべきなのだろうが、
軽妙洒脱な演奏が様々な表情をもつ曲を
時に哀しく、またユーモラスに表現しており、
衒いも違和感も感じさせない。まさに熟練の演奏だ。
酸いも甘いも噛み分けた心優しい老人がアコーディオンで
語りかけてくるような安心感がある。
なによりアコーディオンの音がこんなにも艶があり、
張りがあり、軽快であるのには驚いた。
実はミュゼットというジャンルにはまったく興味が無かったが、
このアルバムが私の聴かず嫌いを木っ端微塵に吹き飛ばしてくれた。
朝に聴けば軽やかなリズムに心が弾み、夜に聴けば憂いに満ちた
メロディーに安らぎを感じる。こんなアルバムもめずらしい。
ちなみに7曲目の『さくらんぼの実る頃』は
宮崎駿の『紅の豚』で歌われているとのこと。
ジャンの演奏と聴き比べるのも一興だろう。