文明学的にも重要なメッセージを世に送ったドラマ『北の国から』にせよ芝居を続けている『ニングル』にせよ、倉本聰の今の思考はすべて富良野から発信されたものであ る。かつての東大出のできのいいシナリオ・ライターという立場とは、少し違った感覚で、今やC・W・ニコルや立松和平などの環境自然派作家(巧く表現できないのでこん
な言い回しになった)たちと一派を成しているように見ている。
富良野は自然そのものではない。自然そのものはむしろほとんど人の住まない、北海道の他の大部分にあり、富良野自体は、自然を人が開拓し作り上げた一つの経済圏であ
る。富良野の酒場に入ると富良野ワインが飲めるが、富良野ワインが富良野の外に出ることはあまりない。山に囲まれた一つの土地に開拓が入って富良野を形成した。
その富良野の現在の経済状況、環境、自然、日本がここに及ぼすさまざまな影響とそこへの憤り。そうしたことどもが、富良野に住む文化人の立場で描かれている。これは沢山の憤りを懐に孕んでいるある一人の作家が表現するごく一部の言葉である。倉本聰の言葉はシナリオにしてもエッセイにしてもとてもわかりやすい。それがおそらく彼にの最大の武器なのである。