リスク管理だけでなく、文章の書き方の手本としても見事
★★★★★
本書はリスク管理の入門書として適切な内容と言える。
まず、実例を挙げて読者の興味を惹き付け、膨大な資料を基に分析した問題点を完結にまとめている。実例としては、パロマ湯沸器事故、ふじみ野市プール事故、あるある大事典ねつ造事件などである。
さらにリスク管理の誤算が以外なところに潜むことを示す。社会保険庁の不正は民間トップを招いて実施した極端な成果主義を推進した事による弊害であること、みずほ銀行システム障害はトップマネジメントの不足による弊害であることなどを示している。
個人的には、過去の対米戦に突入した経緯を海軍艦隊派が犯した禁じ手の統帥権干犯問題(作戦を立てる軍令部が大臣から独立してしまう)にあることや、システム開発において発注側が安易に値切ることや仕様変更を繰り返すことを戒めていることに興味がそそられる。
結論として、組織の不正を正すには、管理職とは別にやかまし屋という悪役になりきる正義が必要であることを述べている。
やはり悪質な事件に対しては特効薬はないのかな
★★★★☆
本書は、組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか (祥伝社新書)の続編です。今回は、パロマ湯沸かし器事故、ふじみ野市プール事故、あるある大事典2、社会保険庁不正処理、みずほ銀行システム障害などを題材になぜ失敗は起こるのか、どうすれば解決に至るのかを追及している。特に今回の事例は、隠蔽、ウソ、事実の捏造など悪質なものが多い。
こうした問題に対する解決アプローチとしては、どのようなシステマティックなものがあるのかと思ったら、意外や意外。最終的には「うるさ型」による、うるさい指導を(こちらも)性懲りもなく継続することだという。読んだ瞬間「あーやっぱりな」と思ったと同時に、この種の問題については特効薬はないんだなというのが正直な感想である。
国家百年の計
★★★★★
認識できねば課題に気づかず、課題に気づかねば対策を施しようが無い。
翻り、決まりを守るには習慣を、習慣は躾を身に付けることが一番である。
近年の不祥事の背景には、躾の不在があるのではないか。
躾の不在は、躾役となる先達がいないことにあるのではないか。
なるほど、トヨタ式が喧伝されて久しいが、上っ面をなぞったような猿真似
ばかりである。トヨタ式の本質は、人材教育を通じた組織文化の育成であり、
一朝一夕にできるものではないという。
なるほど、国家百年の計を思い起こさせる著者の語りに星5つとした。
まずい学流の物事の捉え方
★★★★☆
「組織行動の「まずい!!」学 どうして失敗が繰り返されるのか」の続編。
第1章のパロマ湯沸器事故、ふじみ野市プール事故、「あるある2」番組捏造事故
は、前作の続きの位置づけでしたが、
第2章は、失敗学的な分析の思考や考証・・
「沖縄集団自決事件」や
太平洋戦争前夜に日本軍の中で繰り広げられ条約派と艦隊派の対立など、
歴史的、世界的な事件に適用した分析事例を紹介しており、
樋口さん流の物事の捉え方、参考になりました。
今必要なのは「監督責任」の再認識か。
★★★★★
3時間程度で読み終わったが、あちこちに耳が痛い話がある。
誰でも仕事での失敗は出来るだけしたくないと思うし、
私も仕事でいろいろな作業なり管理なりを行うことが多いが、
忘れがちな「監督責任」について再度思い起こさせてくれた。
つまり、以前から思っていた
・実行責任
・説明責任
に加えて
・監督責任
がある。
「監督責任」は「実行責任」に包含されるものであると考えるが、
アウトソーシングやサービス利用の形態が増えるにつれ、
明確に「監督責任」として意識しなおした方がよさそうである。
#全く意識していなかったわけでは無いけど。
早く第一弾の下記書籍も読んでみたい。
【題名】組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか
【ASIN】 4396110448