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戦略的思考とは何か (中公新書 (700))

価格: ¥798
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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結論までの説得力と、結論の聖典化 ★★★★☆
外交官として外務省に勤務し、日本の置かれた地政学的重要点と歴史的安定がどのようにもたらされていたのか?を事細かに知識として分からせてくれます。もちろんその全てに無批判に賛同しているわけではありませんが、かなりの部分同意できますし、非常に冷静かつ、合理的思考で面白くためになります。


基本的に、その合理的考え方はかなり納得させられます。平和な状態というのは均衡な状態でこそありえる、という認識は確かに納得できました。例えば地政学的に、日本という国がある場所での均衡ということになると、中国という巨大な国の辺境にあった島国ということや、近代的に言えばロシアとアメリカという2大勢力の間に均衡が保たれていたことが平和につながっているという解釈です。世界国家というものが存在していない現状では、均衡こそが平和であるという認識は確かに説得力あります。


また、幕末から日清、日露戦争の解釈(おそらく、この辺の近現代史には様々な解釈があって良いと私は思いますが)は私には同意出来る部分が非常に大きいです。感情的にならず、冷静で起きてしまったことから何を学ぶか?という姿勢はとても面白く読めます。日露戦争というものの影響の大きさを感じさせる部分は特に読ませますし、全く知らなかった島貫重節著「戦略日露戦争」の記載から、民主主義の世界では、指導者だけでなく、誰もが戦略的白痴か誰もが戦略的思考を持つかのどちらかしかないという指摘は、極端過ぎますし言葉としてどうなのか?という部分は脇に置いてしまえば頷ける話しです。今はもっと複雑な世界になりつつあるのでしょうけれど。


同じように太平洋戦争に対する岡崎さんの考え方も面白く、どの時点であったとしても終わらせ方が全く無い、とばっさりで気持ちよい言い切り方です。国際社会にどう見られ、どう見せるか?という戦略も戦術もなく、ただ単に感情的発露のように(真珠湾攻撃まではある程度の言い分もあったかもしれないが、と認めていますが)見えるのは結果に現れている、もし手を出すのであれば何らかの合理的戦略があって良いのではないか?と判断しています。合理的戦略があるならば、あえて恥や非を受け入れることが出来るのではないか?という問いにも思えました。死んだ兵士がその場で立派であったことと、戦略的に良かったことは一致しない、と言い切るところも、私は正しいと思います。この辺は宮台さんの「表現」と「表出」の話しと似ている、と思います。つまり結果が伴わなければ意味が無いことを、もっと冷徹に計算できることは計算しろ、ということに尽きると思います。


そしてデモクラシーが戦争できるのは自国民が安全保障を犯されていると感じた時だけだ、という指摘は、この本が書かれた時期(1983年8月出版)を考えると凄いと思います。9.11以降の対テロ戦争を思うとまさにその通りですし、だからこそ徐々に分からなくなりつつあるのでしょうけれど。


結論に至る過程は素晴らしく戦略的でありますし、そこは読んでいただくのが1番だと思いますが、私が気になったのは結論に対して強く自信を持っているからこその変更の難しさです。岡崎さんもご自分で書かれていますが、家訓のように決まった何かを聖典化することでの思考停止が1番恐ろしく、だからこそ「封建主義は親の仇」という言葉を使っているのですが、それならばやはり岡崎さんの結論である「アングロサクソンとの協調=アメリカとの同盟の重要性」に対しても同じように感じる部分があります。もちろん私はずぶの素人ですが、誰もが戦略論的思考を持つ為にも記して置きたいのは、アングロサクソンとの協調は重要だけれど、それだけに絞ることは危険なのではにか?ということです。戦争行為にはやはりルールがありましょうけれど、テロリズムに訴えるやり方も生まれてしまいましたし、どんなに計算し尽くそうとも、予想外のアクシデントが起こることはありうるわけで、それでも戦略的思考、そしてより平和な確立の高い方への「かけ」は必要でしょうけれど、それ以外の保険をかけておくことも必要だと思います。岡崎さんの結論までの説得力と比べると、その結論への揺るぎの無さ加減が非常に強固で、かえってバランスの悪さのような違和感を持ちました。


もうひとつ、戦略的思考とは恐らく、長期的目標を達成する為の道筋なのだと思います。現実的に出来ることを積み重ね、もちろん相手があることなのでその見通しも上手くいった場合と上手く行かなかった場合をそれぞれ想定し、さらにアクシデントを考慮に入れて考え抜くことだと思います。岡崎さんの言う戦略的思考の冷静さ、汲み取り方、かなり面白く楽しめました。しかし、アングロサクソンと上手く行かなくなった場合の選択肢が無いこと、そして長期的目標である平和よりも刹那的生きる意味を尊重する人にどう同意を得るのか?ということが重要なのではないか?と思うのです。おそらくこれだけメディアが発達し、誰もが同じような情報を手にいれ、そしてそれを商売にしていることにこれだけ慣れてしまった(昔はテレビには公共の電波、という意識があったように思います、古い話ですし、基本的には今でもそうなのですが)煽られやすい存在である民衆への説明責任を問われる政治家というプロが信頼を失ってしまっていると、なかなか難しい状況が考えられます。しかし、それでも、この本は読んでいて面白かったですし、楽しめました。


戦略的思考とはどんなものなのか?が気になる方、そして歴史に興味がある方にオススメ致します。
一読の価値あり ★★★☆☆
 国際政治の古典的リアリズム的な観点に基づく“戦略論”を基にした、当時としてはユニークと自称する日本国の安全保障の書。「自由主義史観」の論陣を張る方々が現在も議論の拠り所の一つにしている、と聞いて手にした。著者は外交官出身であり、日清・日露戦争期の「パワー」比較の分析はシンプルで解りやすく、そこから太平洋戦争期の戦略のなさを批判しながら、戦後の安全保障政策についての議論を組み立てようとしている。「アングロ・サクソンとの協調」を大前提に、(旧)ソ連の地政治学的な伝統的動向を阻止しながら石油運搬のシーレーンを防衛するのが日本の大戦略で、非戦論や平和運動は善意であっても日本を共産主義化する勢力を強める、との立場を示している。
 様々な点からの批判は容易であり、特に「戦争」の性質が変貌し、「イデオロギー」の時代が終わり、国際関係論における「リアリズム」そのものがかなり相対化された現代にあっては、議論の精緻さ、視点の客観性、などについて娯楽的なくらいのどかにも読めてしまうが、それでも当時の一つの立場を知る上で参考になり、一読の価値ありと思われた。
外交戦略の観点から戦略的思考を考える ★★★★☆
タイトルそのままですが,「戦略的な考え方とは何か」ということに興味があって何冊か読みました.本書は,ビジネス物の戦略本ではなく,本当の戦争における戦略に関するものです.また,戦略的な考え方を解説しようとするものというよりは,どちらかというと国家戦略・外交戦略を論じている本です.

日清・日露戦争の頃から現在に至るまで,日本および世界がとってきた戦略を解説しています.例えば,日露戦争の前に,日本はイギリスと組むべきだったかロシアと組むべきだったかということについて,世界情勢を踏まえて戦略的に考えると日英同盟は当然の結論であったというような話は,なるほどと納得させられるものがあります.また,日本は防衛力を増強すべきかという議論では,現在の日本にとって日米同盟が大前提であり,日本が防衛力を増強した分アメリカが手を抜いたのでは増強する意味がないといった議論は,目からウロコものの話でした.

「戦略的思考とはこうだ」と直接は答えてくれませんが,戦略というものが何となく分かったような気がします.
岡崎氏の真骨頂 ★★★★☆
国際政治学に関しては多数の本が上梓され続けているが本書は時を経ても未だ凡百の書物にその地位を譲っていない。全ての出来事を包括することを目指した体系書は、一つの事件を細部に渡って分析することを放棄していたり、「あれも必要だがこれも必要」といった実効性のない議論を展開していたりして読者にとっても何も得るところのないものであることが少なくない。本書は、パワーポリティクスの所在を「旧ソ連かアングロサクソン諸国の二箇所」と捉えその現実認識を失わない限り、戦術的に多少の失敗があっても大失敗はしないことを明言している。著者の真骨頂はこの点に存し情勢分析の多少の失敗をもって彼を批判してもそれは織り込み済みの許容範囲でしかないのである。主張の明快さ、一つの事件の分析をも頗る分かり易く解説する点など、本書は未だに輝きを失っていない。ただし冷戦時期に書かれたものであるため、ソ連崩壊後のパワーオブバランスについては別書を読む必要があるだろう。
思考の「ツール」としては役にたつ ★★★☆☆
右翼の精神論的な思想や左翼の理想主義的な思想と一線を介し、有事の際の現実的な選択として、飛鳥時代の「白江村の戦」から太平洋戦争に至る日本が関わった国際戦争の歴史や、ロシア、中国など近隣諸国の歴史、地政学の観点から、豊富な資料に基づいて独自の視点で分析し、日本が生き残る道はアングロサクソン陣営、特に日米安保条約を機軸としたアメリカとの協調維持が最も有効な戦略であると結論づけている。
要するに「アメリカがいなくなって、日本をどうやって守っていけるの?自存自衛なんて今の日本でできるわけないでしょ。それが現実ですよ。」と言っているのである。
アングロサクソン主導のリベラルな民主主義思想に世界が収斂していくという予測に基づき、「勝ち馬に乗れ」という著者の発想は、「大国」ソ連が崩壊し、地政学的に緩衝地帯と見なしていた中国や北朝鮮が軍事大国として台頭し、アメリカはいつもの如く独善的なモラリズムをアフガンや中東に押し付けて国際非難を浴びている現在の情勢で同調するのはいささか安易かと思われるが、「日本が生き残る」ための思考ツールとして用いる限りにおいて本書の価値は高いと思う。
興味深い点として、著者は日本には戦略を考える「能力」がないのではなく、旧陸海軍が崩壊しそのような教育を行ってた機関がなくなってしまったことが原因だと述べている。伊藤博文や小村寿太郎のような戦略家を今に求めるのは酷かもしれないが、少なくとも国民レベルで自国の安全保障について意識を高める必要性があることを示唆している点で一読の価値はあると思う。