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「戦争学」概論 (講談社現代新書)

価格: ¥840
カテゴリ: 新書
ブランド: 講談社
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国民のための国民による入門的戦争学概論 ★★★★★
 軍事といっても、兵器ではなく、戦略、軍略、政略の本。

 軍事を学ばない政治家がいるのは、日本だけだと始まる本書。

 ナポレオン戦争から現在の日本の軍事的環境とその政策提言まで、わかりやすく、その軍略を説いています。

 本書を読めば、中国が台頭し、ロシアが覇権国家を目指し蠢く時代で、どのような軍事的センスを身につけるか、民主主義の国である日本にとっては重要なことであり、日本がこれからどう進むべきなのか、軍事を語ることなくして成立しないことがよくわかります。

 本書はとても読みやすく、難解なマハンの本やマッキンダーの本を読むことなしに、各国に影響を与えた軍事理論が理解できるようになるように構成されています。

 新書とは思えないほどの読み応えがあり、良い本だと思います。

 国民の軍事入門書として必読の書とも言えます。
無駄に戦争に詳しくなれる ★★★★★
本書は『概論』とありますが、概念や歴史は詳細に書かれてあり、それを専門としない人間としては結構お腹いっぱいになる内容です。本書はその構成として大きく分けて三つに分けられます。

第一講第二講が本書の議論の中心になる思想である地政学について、その概論となります。ここではまた『戦争は政治の一手段である』というクラウゼヴィッツの命題の下に、地政学により政治的な大戦略を立てること、そしてその大戦略があって初めて軍事があることの重要性が何度も念を押されて強調されます。

第三講から第八講までが本書のメインの部分で、先の講で提示した地政学の下に歴史上の戦争を紐解きます。フリードリヒ大王の制限戦争、ナポレオン戦争と絶対戦争の萌芽、その発展としての一次大戦と二次大戦、核抑止力が働き世界が二極化した冷戦、そして記憶に新しいゲリラとテロとの戦争について、軍事という面から歴史を眺めるのですが、この部分が素晴らしい。
まず軍事から見る、とはっきりと制約をかけて歴史を解説し、またそれが成功している、つまりその制約をはみ出すことはなく、また軍事面から見て文句のつけようがないほど詳細に(ある種、新書を読んで勉強しようなんてレベルの人にとっては不必要なほど粘着質に、ていうか単純に著者の趣味なんじゃないか、と疑わせるほどに詳細に)書かれてある点が素晴らしい。面白いです。読んでて楽しめました。
またもう一つ素晴らしい点は、軍事という視点のみで惑うことなく歴史の流れを追うことができるように書かれてある点です。これは歴史というものが、本質的には戦争によって動いてきたという事情にもあるのかもしれませんが、フリードリヒ大王の制限戦争がナポレオンの絶対戦争で打ち破られ、またその絶対戦争が二次大戦で極まり、核兵器により戦争に制限戦争が復古してきて、またイラク戦争で完全に制限戦争が復古される、そして高らかに

「戦争においても主役は「軍事」ではなく、あくまで「政治」であるという、フリードリヒ大王時代の戦争に戻ったのだ。」

と宣言される流れは感動的ですらあります。

最後の第九講「アジア太平洋の戦争学」は今後の日本の国防に関して著者の主張が、今までの議論を踏み台にしてなされます。
はっきり言って、この節は個々の問題がバラバラでまとまりがなく、またあるときは感情的で論理性を欠き、あまりよい出来ではありません。まあ軍事の専門家として現在の日本の国防に憂うことがあるのでしょう。軽く読み流せばよいかと思います。

最後の節はあんまりですが、軍事の歴史を無駄に詳細に語った中の節が最高すぎるので、近代史に興味のある方は絶対に読んで損はないと思います。
多くの内容を盛り込んだ解説書 ★★★★★
 最初の2章で「地政学」について解説。その後の6つの章でナポレオン戦争から第一次・第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争など具体的戦争をとりあげ、そして、最後の章で「アジア太平洋の戦争学」として日本の安全保障について解説している。

 300ページ近くと新書にしては分量が多く、読み応えがある。随所に「なるほど」という記述もある。近代以降の戦争についてしっかりと解説しようという意図を充分に感じる、好著である。

 しかし、その反面で、これだけ多くの内容を一冊に盛り込もうとしたことにはやや無理があり、紙幅の関係でやや説明し足りない章もあるように思う。
とりあえず政治家は読むべきだろう ★★★★★
まず、私自身は筆者の内容に全面同意するわけではない。(特に日米同盟のところとか)
だが、戦争学初心者にはとりあえず読んでみることを薦める。

とりあえず、暴走するのは軍部だけではない。戦争は愚かな政治家が起こす、というのはまさにその通りであろう。
だから、戦争を防ぐためにも政治家は戦争の勉強をしろというのももっとも。

しかし、下の方も書いているが、この本は地政学を軸に戦争を分析しているので、判りやすくはあるが、いささか簡略化しすぎのところもあるだろう。
ほかの戦争学の本も読んでみるのがいいと思うが、とりあえずこの本をステップにするのは悪くないと思う。
戦争をどうこう言う前に読むべき一冊 ★★★★★
「戦争とは政治におけるとは異なる手段をもってする政治の継続にほかならない」
このクラウゼヴィッツの定義がこの本の重要なテーマになっている。
日本では、第二次世界大戦での軍部の暴走から戦争が起こったために、戦争は「軍部」が起こすものだと思われているが、そうではなく、戦争は「政治」がおこすものであって、だからこそ政治家がきちんと軍事を学ばなければならない。

初めの2章程は地政学にページが割かれている。地政学とは要するに、世界のどの地域をおさえれば自国が有利になるか、ということだと思う。世界の国々はこの地政学的思考によって大戦略を定め行動しているのだが、日本には地政学を研究している機関もなければ大学での講義もないらしい。それは日本の第二次世界大戦での大東亜共栄圏構想等の過ちを地政学のせいにしているからであるが、筆者にしてみればそれは間違いであり、地政学自体が悪いのではなく、その適用が誤っていただけだという。

その他、ナポレオン戦争からイラク戦争まで、戦争がどのように変わっていったのかが書いてある。新書にしては300ページ程あってすごく読み応えがあった。

「世界の安全保障の中心には、いやでも軍事があり、現実に戦争は頻発している。たとえ、日本から決して手を出すことがなくても、攻撃されることを百パーセント避けられる保証はないのである。筆者は戦争を推奨するために、戦争を学べと主張しているのではない。知らないことがもっとも危険であると言いたいのだ。」
もう、めちゃくちゃ賛成。