私的にこの巻の注目ポイントは、ユーハ・ノーキーこと乃木優羽嬢の内面描写です。「うあー…。痛い……」正直な感想です。といっても、別に血なまぐさい戦闘シーンがあるとかいうわけではなく。ではなくて、優羽の性格の一部が、私自身が確かに持っている、でも自分では大嫌いで消し去りたいと思っている部分の一部に、似ているからです(ユーハファンの方ごめんなさい! 貶してるわけじゃないです!!)。彼女の場合は自分の血筋に対する劣等感が原動力のようで、その部分は正直よく理解できなかったのですが、それ以外の色んな所に「あー…わかるような…しかしわかる気がする自分が嫌…」と感じました。
そのものずばり書くのもまずいかな?と思うので、例えですが、例えば、「けっこう気の強い」女の子は「とてつもなく激しい」人のレベルまで達せない自分を許せず、それだけならいいけど、相手も“素の自分”も必死に否定しようとする。「この世の最大最悪のテーマは、“嫉妬”」――3巻のレヴィの台詞が鮮やかにに蘇ります。彼女の真摯さ故に、痛々しい気がしてならない。嫉妬や歪んだ憧憬をここまでリアルに描かれると、びしばし自分の痛いところに突き刺さります。
一人で、自分の力だけで強く生きたいと彼女は願う。強い生き方とは「容赦のない」ことと同義なのか? 強く生きるにはどうしたらいい? 自分の足で立つとはどんなこと? 逃げずに立ち向かうとは? 彼女の心のあり方(以前のハイマンもかな)が、そんな数々の問いを投げかけてきます。
なるしま作品の魅力である奥深いストーリーや心理描写は相変わらず健在です。おすすめです。
”あたしは自分が消えてもいいなんて絶対思わない。いつか死ぬのはいいさ。仕方ない。でも、歴史にも時代にも何一つ刻まずに、自分がダラダラ消えていくのが本気で怖くないなんて信じられない。”
は、前々から強く思っていただけに、これからもこれに向かってもっと頑張ろうと思いました。