音楽の構造上、重要とは思えない楽節の転換部で、彼は「ふっ」と短いパウゼを入れる。これが何とも言えず美しい。「無意味だ」と怒る人の気持ちがわからないでもないが、やっぱり良いものは良い。
モーツアルトのジュピターでも、ワルターはたくさんの路傍の花を発見して、私たちに教えてくれる。相手がモーツアルトなだけに、路傍の花でも、とてつもなく愛らしいものばかりだ。
何度も立ち止まりながら到達した最後のフーガ。当初の「ドレファミ」の音を中心としたフーガの展開がひとしきり終わって、「ソミラ」の音型が出てきた時の、何ともいえない気持ち。心が洗われたような気分に襲われた後、壮大なクライマックスを迎える。
聴けば聴くほど味が出る、文句なしの名演!