山崎ナオコーラさんが大好きです。なかでもこの作品は素晴らしい。
非正規雇用の問題がひとつのモチーフになっていますが、作者の目的はそこだけではない。
なんとなくからだで感じる日常の風合いを「感じる」ということのかけがえのなさが、非常に繊細に、しかしマニッシュな文体で書かれています。
好き嫌いが分かれる作風かもしれませんが、
私は大好きです!

次はどんな本だろう、とナオコーラさんの新刊は待ち遠しい。今回は帯が透明で、見返しのページは折り込み。裏には表題作の登場人物のデスク配置が書かれている。「仕掛け」の新奇さでアピールしてくるのはあまり好みではないが、彼女の場合は許せる。なぜなら、文章がもっともっとアピールしているから。ますます磨かれていく、短くて洒脱な会話、突然ぽんと置かれる内心の吐露の言葉が、はっと胸に突き刺さる。
やっぱりなんにもないじゃないか、と思う人は今回も多いと思うけれど、高橋源一郎が「人のセックスを笑うな」の選考のとき、タイトルを見て、これに決まりだとすぐにわかった、といっていたように、やっぱりナオコーラの世界は消えない。確かに存在しているのだ。