アメリカのジレンマ
★★★★★
グンナー・ミュルダールが「アメリカ的信条」とその矛盾としての人種差別の問題を論じて以来、「アメリカとは何か」という問いに常にまとわりつくのが、人種という問題。本書は、近年の歴史学や社会学などの知見にもとづいてこの問題と取り組もうとする論文集。
各論文は前半が時系列に沿ったもので、後半は争点ごとの内容(人種間結婚やスポーツなど)。どの章も勉強になる。精密に註をつけた研究書というよりは啓蒙書的な色彩が強いが、参考文献が各章に紹介されており、初学者には非常に参考になる。特に貴堂嘉之氏と中野博文氏が担当した章は刺激的。