流血と策謀と愛の戦記
★★★★★
11世紀北欧のヴァイキングを題材とした漫画の第2巻。物語の大まかな背景が
明らかにされる巻であり、主人公トルフィンが1巻にて奮戦の褒章に要求したものが
協力している傭兵団の首領アシェラッドとの決闘という妙なものであったわけ、
両者の因縁の根源と、捨て身の凄腕少年戦士トルフィンが誕生した理由とが
ここで判明します。
私は幸村誠という作家さんをこの『ヴィンランド・サガ』を通して知り、
ゆえに特に前知識も思い入れもなく1巻から読み進めてきたのですが、「この作品は
すごい、最後までつき合わせてもらおう」と思わされたのがこの2巻でした。
前述の通りこの巻で物語が透明になったのも理由の一つですが、やはり表情の
見せ方を含むキャラクターの描写の巧みさと、迫力的な殺陣にやられたところが
大きい。どれも「できて当然じゃん」と言われそうな要素ではありますが、
ここまで高いレベルで見せてくれるとやっぱりお見事と言いたくなるわけで、
トルフィンがチャンバラの後に鼻血をぬぐったときや刃物に魅せられたとき、
あるいは復讐を誓ったときの表情や、若かりし頃の父親トールズに対して
妻のヘルガが怒りを見せたときの顔つきなど、節々でぐいぐい引き込まれ、
そうした波がいつしかどんどん大きくなって、最後はのめりこんで読んでいました。
この巻までが序章といった感じで、ここから本格的に物語が動き出し、
登場人物も増えて流血と策謀渦巻く幕が上がります。かなり生臭い展開が
続きますが、愛とは何か、人が生きるとはどういうことか、といったような
テーマが底にあるせいか、ただのどろどろした悲劇とは一線を画す読み応えの
ある出来になっています。興味のある方は、まず2巻までどうぞ。
弱さと無知と虚勢と強さと
★★★★★
遅ればせながらレビューさせて頂きます。
ヴィンランド・サガ第2巻では、トールズの死やトルフィンとアシェラッド達との対面などについて触れられています。
絶対的な強さを誇るトールズでしたが、彼とトルフィンに待ち受けていた結末は……。
トルフィンや村の若者たちの虚勢や無知、ヴァイキング達の狡猾さ(でも当時の背景から言ったら一概に悪とは言い切れないかも)などによって、トールズの『強さ』が一層際立って見えました。
未読の方にも是非読んで頂きたい名作です。
新装第二巻!
★★★★★
新装版以前のモノの第二巻の最後までを収録してあります。
トルフィンの幼少期編が一段落つきます。
新装版といってもコミックのサイズが一回り大きくなる。故にページが大きくなり、迫力が増します。
トルフィンがアシェラッドを何故目の仇にするのかが明かされる。
また、父トールズの"言葉"が意味するものは何なのか?
とにかく話が濃密で面白い、ワクワクする作品です。オススメです!
トールズとアシェラッド、二人の戦士
★★★★★
この巻は最後までトールズの独壇場。
特にアシェラッドの海賊団との戦いは圧巻。
「戦鬼」の名に相応しい戦いぶり、一人も殺さず30人を戦闘不能にする実力。
正に戦士の中の戦士。
「本当の戦士には剣など要らぬ」には痺れるね。
(しかしその心は幼いトルフィンには伝わらず…)
地味だけどアシェラッドの心理描写もすごくいい。
潔く負けを受け入れ、本気でトールズを頭に誘う度量。
でも受け入れられないと見るや冗談にしてしまってごまかしたり、
ビョルンが暴走してトルフィンを人質に取った時、諦めたような笑いを浮かべたり。
立場上ああするしかなかったんだろうが、本当は殺したくなかったんだろう。
「てめえらクソガキ100人でも釣りのくる死だ」と吐き捨てていたのは本心からだろうな。
海賊の頭にしては妙に潔いところがあるアシェラッドが
おちゃらけた仮面の下に隠している過去はどんなものなのか興味が湧いて来た。
父が子に託したかったもの
★★★★★
トールズが格好良すぎて、何度も読み返してしまいました。
トルフィンの幼少期、父トールズの死に至るまでの物語がつづられます。この巻を読めば、トルフィンが背負った暗い影の全容を理解するでしょう。
父トールズが我が子に託したかったもの。こっちの方にこそがこの物語の主題に近いのかなと思いますが、それは今後の続刊で語られるのではないでしょうか。
また、仇であるアシェラッドの人となりについてもしっかりと分かります。
描出の細かさ、演出の鋭さ等申し分ありません。
今後への期待も含めて、☆5つとします。