かつてのブルース・スプリングスティーンはインスピレーションの源を西に求め、その結果、荒涼とした『Nebraska』とシリアル・キラーと中古車の物語となった。3年ぶりのアルバムで、スプリングスティーンは不毛の砂漠と古き良き西部の戦場を案内し、12の孤独な歌を仲間のアーティスト、そして彼のアコースティック・ギターで披露している。いつものフックを繰り出すパンチ、そしてそれぞれの旅が脳裡に刻みつけられるメロディーで、今回のスプリングスティーンは歌詞を重視して、悲劇、失恋、欲望をラテン系の解釈で紡ぎ出す。「The Hitter」での帰郷したボクサー、「Matamoros Banks」での絶望的な国境越え、そして「Reno」で、警告のステッカー“成人向け画像”に通じるネバダの気の良い売春婦。ミックスにEストリート・バンドが参加していないアルバムはホーンセクションとストリングスで彩られ、珍しくスプリングスティーンがファルセットを2曲の名曲で披露している。40夜の旅を終えて恋人の元へ戻った語り手を歌った「Maria's Bed」、心ではカロライナ以上のことを思っているアップテンポの「All I'm Thinkin' About」だ。これは10年後には、スプリンスグティーン作品の中で過小評価されているアルバムになりそうだ。（Scott Holter, Amazon.com）