短文、本質に迫る
★★★★☆
神田橋先生のお名前は今や評者のような門外漢にも敬意とともに語られるほどに、よく知られている。とはいえ、精神科の医師の書評を集めたこのような地味な本が一般の書店の棚にならぶのは、とても有り難い、嬉しいことである。
「ミルトン・エリクソン書簡集」という本のまえがきの中で神田橋先生はこんな風に語る。
「催眠に関心のない、臨床家にこそ読んでもらいたいと思う。臨床の要は働きかけにはなく、『目と・耳と・思考と・たましい』とを使った観察にある。それを『理解』と言い換えてもよい。」
「臨床の要は働きかけにはない」。ああ、なんと大切なことをさらりと言ってくださることだろう。
患者に(ひいては他者に)害を与えないために、毎日唱えてもよい名言だと思う。