インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

比較不能な価値の迷路―リベラル・デモクラシーの憲法理論

価格: ¥3,990
カテゴリ: 単行本
ブランド: 東京大学出版会
Amazon.co.jpで確認
比較不能な本書の迷路、しかし、必要な迷路。 ★★★★★
 著者は憲法学者であるが、しかし、本書の射程は政治哲学・法哲学にまで及ぶ。著者の立場は、リベラリズムといってよいが、しかし、他のリベラリストと比較すれば、大きな距離がある。ここでは同じくリベラリストの井上達夫と比較してみよう。

 第一に、リベラルであることの偶然性を認めること(69頁)。地球上のあらゆる社会がリベラル・デモクラシーに直ちに転換すべきかという問題について、長谷部は否定的。対して、井上は、多くの留保をするだろうが、基本的には肯定するだろう(正義の普遍性)。

 第二に、「決定されたから正しい」という調整問題状況の扱い。長谷部は、肯定的。対して、井上は、調整問題に対しても、制約があることを強調する(同『法という企て』8頁)。

 第三に、偶然性を重視するゆえに、現状をふまえたうえで論が進められる。例えば、132頁のウォルドロンの議論が妥当しない状況は、日本の政治状況であろう。この点で、長谷部の議論はアメリカの公共選択論に還元できない。井上の議論の中にも、多くの現状記述があるが、それは、派生的役割である(ただし、井上の「一応の」という概念を考えれば単純ではないが)。

 以上のような立場のためか、本書の記述は淡々としている(現実はこうだよという感じに)。そして、さりげない記述に重要な条件が書かれる。精読に要求される本であり、また、精読に値する本であろう。

憲法学への偏見が消えた! ★★★★☆
 私は、憲法学が苦手だった。門外漢の私には、抽象的な国家論・権利論がいまいちピンとこなかったのだ。しかし、現在の憲法学会をリードする著者による本書を読んでその考えを改めさせられた。
 著者は、我々の現実の社会・国家・市民像を冷静に捉えながらも、なお国民の自律・権利の保障に対する司法とりわけ憲法に向けられた期待感を、理論的に説得力を持って示している。本書を読み、憲法学への抽象的で難解という私の偏見は払拭された。憲法は、我々の社会生活にまさに密接に関わっているのだということを再認識させられたのだ。学部生の頃、本書に出会っていたら憲法学へのイメージが変わっていたかもしれない。
 過去の論文をもとに編集されていることから、同一の事柄・見解が繰返される点は、若干工夫が欲しかったところであり、また、難解な叙述も多い。しかし、本書の内容は、それを補ってあまりある。憲法学が苦手という人にはお勧めの一冊である。
 
限界寸前 ★★★★★
この著者の他の著作とともに、必読の書。
よく比較され論争もしている松井茂記との理論的優劣は微妙なところだと思う。

著者は本書の中で、司法審査のリベラリズムによる基礎付けを行うが、いわゆる民主的政治過程論の扱いが完全に宙に浮いている(これは芦部以来の難点)。この点、松井理論は民主的政治過程論オンリーで単純明快(わかりやすければいいとも思わないが)。

松井理論の近時の共和主義への接近には危うさもあるから(相対主義のはずがなぜ卓越主義に??)、長谷部理論の一層の彫琢が期待されるところ。
ともあれ、法と道徳の閾界を堪能するにはこの本!!