天皇と重臣たちの違い。
★★★★★
本書は日本における政党政治を、天皇と内大臣や侍従、元老、そして軍部とのかかわりを中心にえがいている。
バランス感覚にすぐれ、たびたび、調停者としての役割を果たした明治天皇や、カリスマ性と政治力にすぐれた元老たちから、憲法運用の手法や実際の天皇のあり方について、昭和天皇は学ぶことができなかった。は明治天皇崩御のとき昭和天皇は幼かったし、父の大正天皇は病弱であったからだ。
明治天皇が行わなかった首相への問責などを行った事は、昭和天皇は公平な調停者としての能力を失い、天皇の権威を傷つけ、軍部のコントロールを困難にしていった。
著者は政党政治や立憲君主制を、日本は「わずか五十年ほどでイギリスに類似した程度まで形成した」(p175)と述べる。この点が最も、本書でもっとも斬新な点だと思う。
著者はイギリスと日本の近代君主制の実態が大きく異なるとされているのは、日本内外の日本史、西洋史研究者の理解不足に起因しているとする。
近代イギリスの君主が一般に考えられている以上に政治関与しているのに対し、明治天皇は一般に考えられている以上に政治関与していないと述べる。
明治と対比することで、なぜ、軍部のコントロールが困難になっていったのかが、解るようになっている。
おもしろかった。