太平の眠りをさます上喜撰たった四杯で夜も眠れず
★★★★☆
本書は、江戸末期の日本の政治経済について、事実を網羅的に記述するというよりは、だれもが知る重要な出来事へと至る歴史の土台をていねいに分析しています。格調の高いやや難解な表現がされていますが、教科書や参考書で知ったレキシでは満足できない「一般の方」向けの内容となっています。
かといって教科書に書かれた「一般通念」を筆者は所どころでくつがえしており、いわゆる常識を疑って、現代の日本人に植え付けられている漠然とした先入観を微修正してくれます。
たとえば、民衆一揆の作法や、外圧に際しての幕府内部からの開国論主張、孝明天皇をとりまく自由な議論の様子など、これまで言われてきたのとは違う視点があり、今後は別の見方で幕末が読めるのではないかと思えてきました。
幕末史は、尊王攘夷論を中心としていろいろな立場があります。その利害関係者(天皇、朝廷、幕府、諸藩主、下級藩士、外国)の思想的な動き・変化をつかむのに苦労し、図に描いて覚えよう頑張っても、どうしても納得がいかない点がありました。同じような経験をされた方は、本書のような詳しい時代背景的分析を読んでぜひ疑問を消化してほしいと思います。