インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

文明としての江戸システム 日本の歴史19 (講談社学術文庫)

価格: ¥1,260
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
Amazon.co.jpで確認
江戸システムの意義と限界 ★★★★★
 本書は1947年生まれの日本経済史・歴史人口学研究者が、2002年に刊行した本を文庫化したものである。本書の言う江戸システムとは、一定の豊かさや先進的なエネルギー循環体系を独自に発展させた、日本列島内部での相対的には自己完結的な閉鎖体系(14〜19世紀)であり、人口増加(17世紀まで)・経済社会化・勤勉革命を背景として成立したシステムであるとされる(幕藩体制も市場の存在を前提としている=間接農産消費)。本書ではこうした江戸システムの特徴を、人口動態(結婚初期の離縁と再婚の多さ、皆婚傾向、18世紀以降の少子高齢化傾向など)、家族形態(経済社会化に対応した直系家族世帯による小農経営の一般化)、国土開発(耕地拡大、日本版プロト工業化、公害の発生など)、全国的経済循環構造、民衆生活(時間観念、主食の地域差と18世紀以降の米食慣行の成立、教育の浸透など)等の諸側面からつかもうとしている。その際に注目すべき点としては、本書は植民地化や奴隷制を特徴とする西欧近代世界システムとは異なるシステム、資源の再利用、出生抑制による生活水準の向上、勤勉と教育水準の高さを特徴とする高度な文明システムとしての江戸システムの意義を実証的に論じつつも、他方で同じく実証性ゆえに、その美化をも戒めていることである。具体的には、寿命の短さとその不公平な配分、身分制と硬直した政治制度、公害の発生、日本的食生活の問題点(動物性蛋白質とビタミンの不足)などが挙げられる。実際、18世紀以降の江戸システムは、高度有機エネルギー経済社会ゆえの人口支持力の天井に直面し、また政治権力も農業に基盤を置くがゆえに、財政赤字を拡大させ(表高と内高のずれの拡大)、次第に行き詰まりを見せてゆく。このように本書は、冷静かつ実証的に江戸システムの意義と限界について論じている点でお勧めできる。