破顔一生
★★★★★
読書人は、あざとい書名にダマされてはならない。
非読書人は、この軽い書名にダマされて御一読をなさるがよい。
タイトルから想像する以上に内容は濃く、文句なく面白い。
一読、破顔一笑。
再読、破顔一生、だ。
収録されているコラムの味は一篇ごとに異なる。
だから本書の一気読みは誠にもったいない。
寝床、通勤電車、トイレなどで数日をかけて少しずつ味読したい。
さまざまなシーンでのコトバをめぐる爆笑エピソードが盛り込まれているが、
文楽、志ん生、圓生、文治、志ん朝、そして、家元談志らが登場する
落語界の挿話が、やはり楽しい。
中でも、落語立川流の惣領、桂文字助伝説は最高だ。
2002年に毎日新聞社から出版された「日本語通り」の改訂版が同書。
旧書名に含まれる「通」の文字はSTREETの意味だが、
「その道の通」「精通」の通でもある。
落語家であり、多くの著作をものにする作家でもある著者は、
まさに、日本語の通人だ。